幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 翌週の金曜日。

 朱里は例のサロンで支度をし、瑛と一緒に菊川にパーティー会場まで送ってもらった。

 瑛の両親も、もう一台の車で向かう。

 到着すると、車から降りた瑛はスマートに朱里に手を差し伸べてくれる。

 腕を組んで歩く瑛の両親の後ろを、瑛と朱里も同じように続いた。

 途中でこちらを振り返った二人が、ふふっと笑って顔を見合わせ、朱里は、ん?と首をかしげる。

 (おじ様とおば様、なんだか妙に楽しそう。仲良しだなー)

 フォーマルな黒の装いの二人は、何年経っても恋人同士のような雰囲気で、とてもお似合いだ。

 (いいなー、憧れちゃう)

 やがて、会場のバンケットホールに着いた。

 前回と同じく、ゲストは年齢層が高い上に男性がほどんどだった。

 薄いパープルの、ふんわりしたシルエットのドレスを着た朱里は、一歩ホールに足を踏み入れた途端に注目を浴びる。

 すぐに加賀美会長が近づいてきた。

 「これはこれは、桐生さん、朱里さん。よく来てくれたね」
 「加賀美会長、ご無沙汰しております。今夜はお招きいただき、ありがとうございます」

 朱里は瑛と一緒に頭を下げる。

 「いやいや、こちらこそまた会えて嬉しいよ。先日兵庫でコンサートをされたそうだね?素晴らしいコンサートだったと噂になってるよ」
 「ありがとうございます。東森芸術文化センター管弦楽団の皆様にご協力いただき、大変光栄でした」
 「そうか。またぜひ、色々な楽団に声をかけてくれ。私も協力は惜しまないよ」
 「ありがとうございます。会長、弊社の社長をご紹介してもよろしいでしょうか?」
 「おお!桐生社長だね。もちろん」

 瑛は両親に目配せした。

 近づいてきた二人は、にこやかに会長と挨拶し、名刺を交換する。

 「桐生ホールディングスさんが音楽業界にお力を貸してくださるなんて、本当に有り難いです。それに社長、立派なご子息をお持ちですね。羨ましい限りです。御社の将来も安泰ですな」

 瑛と朱里を見比べて、にこにこと会長は話す。
 ん?とまたもや朱里は首をかしげた。

 「ありがとうございます。いやー、まだまだ未熟者ですので、どうか会長からもご指導ご鞭撻の程、よろしくお願い出来ればと存じます」
 「いえいえ。私の方こそ、次の世代の桐生ご夫妻にもお世話になりそうですな。いやはや、楽しみにしておりますよ。ははは!」
 「いやー、それはいつになりますやら。あはは!」

 朱里が首をひねったまま愛想笑いを浮かべていると、東条が近づいてくるのが見えた。
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