幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 そろそろ帰ろうか、と瑛の父に声をかけられ、皆で挨拶をして回ることにした。

 一人一人に、今夜はこれで失礼いたします。いずれまた、近いうちに…と頭を下げて回るのは、なかなか時間がかかる。

 いっそのこと出口で、それでは失礼いたします!と体育会系よろしく叫んだ方が早いのでは?と朱里は思ったが、まあ、そういう訳にはいかない。

 ようやく加賀美会長に挨拶を済ませ、これでひと通り大丈夫かな?と思った時、朱里さんと後ろから声をかけられた。

 はい、と振り向いた朱里は、至近距離にいた東条に驚いて思わず後ずさる。

 が、とっさに足を引いた為、高いヒールを履いた右足首をドレスの中でグキッとひねってしまった。

 (痛っ…)

 「朱里さん、またお会いする日を楽しみにしています。それから良いお返事も…」

 そう言って東条は、朱里に右手を差し出す。

 朱里が同じように右手を差し出し握手すると、最後に東条はスッと身を屈めて朱里の手の甲にキスをした。

 朱里はすぐさま手を引く。

 「それでは、桐生さんも。またご連絡いたします」
 「かしこまりました。よろしくお願いいたします」

 瑛は東条と握手すると、朱里の腰に手を回してグッと抱き寄せた。
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