幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 「朱里、足首大丈夫か?」
 「え?あ、うん」
 「無理するな。俺に寄りかかっていいから」
 「ありがとう。よく分かったね」
 「バーカ。何年一緒にいると思ってんだ?パート2」

 ふふっと朱里は笑う。
 だが、歩き始めると顔をしかめた。

 思ったよりもズキズキと痛みが酷い。
 なんとか1階のエントランスまで行き、菊川が開けてくれたドアから車に乗り込む。

 「朱里、足見せてみろ」

 瑛はすぐさま、朱里の右足首に手を添えた。

 「痛っ!」
 「ごめん。その様子だとだいぶ痛むだろ?腫れも強くなってる。朱里、うちで手当するから」
 「え?いいよ、そんな」
 「良くない。一人暮らしの家で階段も上がれないぞ?」
 「そんな、大丈夫だって」

 だがそのうちに、ズキンズキンとまるで心臓の鼓動のように痛みが強くなってきた。

 朱里は顔を歪めてひたすら耐える。

 そんな朱里の様子を見て、瑛は屋敷に着くなり朱里を抱き上げて車から降ろした。
 そのまま玄関へと向かう。

 先に着いていた瑛の両親と、玄関を開けている千代が驚いたようにこちらを見ている。

 「ちょ、瑛!下ろして!」

 恥ずかしくて必死に下りようとするが、瑛は気にも留めずに玄関を入る。

 「まあ!朱里お嬢様、どうかなさいましたか?」
 「足首をひねった。千代さん、氷水を」
 「はい!ただいま」

 瑛はリビングのソファに朱里を下ろした。

 「朱里ちゃん、大丈夫?」

 瑛の両親も、心配そうに覗き込む。

 「大丈夫です。すみません、お騒がせしてしまって…」
 「ううん。それより、そんな足では不自由だわ。今夜はここに泊まって」

 ええー?と朱里は驚く。

 「そんな、大丈夫ですから!」

 すると、氷水で冷やしたタオルを瑛が患部に当てる。

 「朱里、冷やすぞ」

 ウッと朱里は顔をしかめた。

 「少し触れただけでもそんなに痛むようなら、しばらくは安静にしないと」

 瑛の言葉に両親も頷く。

 「そうだよ、朱里ちゃん。無理に歩いて悪化したらいけない」
 「それに一人で家にいたら、何かあった時に誰も気付けないわ。朱里ちゃん、しばらくうちに泊まってね。瑛、朱里ちゃんを部屋に運んでちょうだい」
 「分かった」

 有無を言わさぬ皆の雰囲気に呑まれ、朱里は黙って従うことにした。

 瑛が再び朱里を抱き上げて2階へと上がる。

 「ごめん、重いよね?」
 「まあね」
 「ちょっと!普通は否定するもんでしょ?」

 瑛は涼しい顔で階段を上がると、以前と同じ部屋に朱里を運び、ベッドに座らせた。

 千代がもう一度冷たいタオルで足首を冷やしてくれる。

 「まあ、朱里お嬢様。かなり腫れてますわ。湿布を持ってきます」
 「ありがとう、千代さん」

 瑛が湿布を貼り、テーピングしてくれる。
 おかげでかなり痛みも楽になり、朱里はホッとした。

 「朱里、明日は会社休め」
 「え、でも…。色々進めなきゃいけない案件があるし」
 「パソコンを用意するから、ここで作業したらいい。何かあったら電話するから」
 「あ、うん…」

 確かにこの足では出社する方が迷惑かも、と朱里は頷いた。

 千代が新しいパジャマや着替えを用意してくれ、朱里は有り難く使わせてもらった。

 洗顔と歯磨きを済ませると、ゆっくりとベッドに戻る。

 サイドテーブルで、瑛がノートパソコンをセッティングしていた。

 「これで使えると思う。でもくれぐれも無理はするなよ」
 「分かった。ありがとう!」
 「じゃあ、今夜はゆっくり休め」
 「うん。おやすみなさい」
 「おやすみ」

 瑛は、ふっと朱里に笑いかけてから部屋を出ていった。
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