幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 「瑛?ちょっと大丈夫?のぼせた?」

 朱里に顔を覗き込まれ、瑛は急いで否定する。

 「いや、違う。大丈夫だから」
 「そう?でも瑛、一回出てくれる?」
 「で、出る?!って、湯船から?」
 「そう。それでここに座って」
 「ちょ、ま、待て!そんなことしたら…」

 瑛は、頭から何かが噴火するような気がして必死に首を振る。

 「ほら、早く!あ、ちゃんと腰にタオル巻いてから出てよ?」
 「そそそ、それはもちろん」

 朱里が優に話しかけている間に急いで湯船から上がり、瑛は洗い場の椅子に座る。

 「はーい、優くん。おじさんに抱っこしてもらおうねー」

 そう言って朱里は、瑛の膝の上に優を半分寝かせるように座らせた。

 そして手早く優の頭を洗うと、顔にお湯がかからないよう注意しながらシャワーで泡を洗い流す。

 「はい!綺麗になったよ。じゃあおじさんとチャプチャプ入ろうね」

 湯船に浸かってからも朱里は優に、アヒルさんだよーとおもちゃを近づけたりする。

 瑛はひたすら、自分の腰を覆うタオルがめくれないように必死で押さえていた。

 風呂から上がりなんとかTシャツと短パンを履くと、バタン!と、瑛は和室に敷かれた布団の上にうつ伏せで倒れ込む。

 もはや身体は完全にのぼせ上がり、顔はタコのように真っ赤だった。
 
 菊川はそんな瑛にクスッと笑って麦茶を差し出す。

 「瑛さん、どうぞ」

 瑛は少し顔を上げるとコップを受け取り、一気に飲み干した。

 「麦茶、美味しいねー」

 朱里の可愛らしい声が聞こえ、瑛はまた真っ赤になる。

 「瑛さん、朱里さんは優くんに話してます」

 菊川に冷静に教えられ、瑛はグッタリと布団に横たわる。

 「菊川、俺のことはしばらく放置してくれ」
 「かしこまりました。どうぞごゆっくり」

 菊川は笑いながら立ち上がった。
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