幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 翌週、朱里と瑛は羽田から飛行機で南紀白浜空港へ飛んだ。

 「えーっと、ここから車で30分くらいだって」
 「分かった。タクシーで行こう」

 二人は空港からタクシーで、直接コンサートホールへ向かう。

 そこで今日、地元の楽団がリハーサルをしているとのことで、打ち合わせと下見を兼ねて話をすることになっていた。

 「瑛、海が見えるよ!綺麗だねー」
 「ああ」

 外の景色に釘付けになっているうちに、目的のホールに着いた。

 ロビーで、楽団の事務局長とホールの館長が出迎えてくれる。

 「これはこれは、遠い所をようこそお越しくださいました」
 「初めまして。桐生と申します」

 名刺を交換してから、まずは依頼された経緯について詳しく話を聞く。

 「この辺りもどんどん人口が減ってきまして、コンサートを開いてもなかなか客席が埋まりません。このホールを拠点に活動している地元のオーケストラも、財政難で存続が難しくなってきました。なくなってしまう前に、是非とも子ども達に生のオーケストラを聴いてもらいたいと、今回、桐生ホールディングスさんに依頼させていただいた次第です」
 「なるほど、承知しました。では、この地域の小学生と中学生を招いてのステージですね。せっかくですから、子ども達も参加出来るコーナーを企画してはどうでしょうか?例えば、合唱団とコラボしたり、楽器が出来る子ども達に演奏に加わってもらったり」

 瑛の言葉に、へえーと館長達は頷く。

 「それはよろしいですな。子ども達、いい記念になって喜ぶと思います」
 「そうですね。もしよろしければ学校で子ども達に、どんなことをオーケストラと一緒にやりたいか?と意見を募っていただいてもいいかと思います」
 「分かりました!学校とも連携して企画します。それではホールの中へどうぞ。ちょうどマエストロが指揮を振っておりますので」

 案内されて、瑛は朱里とホールの客席へと入る。

 リハーサル中の楽団の綺麗な響きが、客席の一番うしろまで聴こえてきた。

 客席数は1500席足らずと、そこまで大きなホールではないが、舞台後方席があるのは魅力的だった。

 「瑛。あの舞台の後ろの席で合唱団が歌ったら素敵じゃない?」
 「あー、確かに。いいね」

 朱里は参考にする為、何枚か写真を撮らせてもらった。

 曲が終わったタイミングで、マエストロや楽団員にも挨拶をする。

 「子ども達の為に、心に残る素敵なコンサートにしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします」

 瑛と朱里が頭を下げると、皆は拍手をしながら頷いてくれた。

 今後はメールや電話で詳しいやり取りをすることにし、今日のところは引き揚げる。

 二人は、雅が予約した桐生グループのホテルに向かった。
< 175 / 200 >

この作品をシェア

pagetop