幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 「瑛様。お待ちしておりました。さあ、どうぞ中へ」

 ロータリーでタクシーを降りるなり、スーツを着た男性が三人ほど近づいてきて頭を下げる。

 トランクに積んでいたキャリーバッグも、気付けばスタッフ達の手によって運ばれていた。

 ホテルのロビーに入り、てっきりフロントで受け付けをするのかと思っていた朱里は、そのままエレベーターで上層階に案内されて戸惑った。

 (な、なんだか大名行列みたいなんだけど…)

 ぞろぞろとスーツの男性やベルボーイに囲まれて廊下を進む。

 「お部屋はこちらでございます。さあ、どうぞ」

 瑛に続いて部屋の中に足を踏み入れた朱里は、驚いて目を見開く。

 貴賓室のようなその部屋は、このホテルで一番豪華で高級な部屋に違いなかった。

 「こちらにコーヒーをご用意しております。どうぞ、おくつろぎください。夕食は、19時にフレンチレストランでご予約いただいておりますが、お変わりございませんか?」

 瑛は苦笑いしつつ、はい、大丈夫ですと答える。

 では何かございましたら、いつでもご連絡を…と言い残して、スタッフ達は部屋を出ていった。

 「姉貴のやつ、夕食の予約まで入れやがって…」
 「そ、それより瑛。こんな豪華なお部屋でいいの?」
 「いいんじゃない?全部姉貴の手配だし。ほら、コーヒー飲もう」
 「う、うん」

 ソファに並んで座り、淹れたての良い香りがするコーヒーを、添えられたお菓子と一緒に味わう。

 「外の景色も綺麗ね」
 「ああ。子どもの頃、何度か来たのは覚えてるけど、随分久しぶりだなあ」

 ひと息ついてから、二人は書類を確認しつつ今後のスケジュールを立てていく。
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