幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 その時、朱里のスマートフォンが鳴った。

 「あれ?雅お姉さんからだ」

 なんだろう?と思いながら通話ボタンをタップする。

 「もしもし、お姉さん?」
 「朱里ちゃーん!もうホテルに着いた?」
 「ええ、先程無事に。お姉さん、色々手配ありがとうございました」
 「ううん、いいの。それより朱里ちゃん。クローゼットに私からのプレゼントが入ってるはずだから、ディナーにはそれを着て行ってね」

 え?と朱里が聞き返すと、じゃあね!素敵な夜を、と言って電話は切れた。

 「姉貴、なんだって?」
 「うん。なんかクローゼットにプレゼントが入ってるって。どれだろう?」

 広い部屋をキョロキョロするが、ソファや大きなテーブルがあるだけでクローゼットは見当たらない。

 すると瑛がスタスタと壁際へ行き、ドアを開けた。

 「え、もう一部屋あるの?」
 「ああ。だってここにはベッドがないだろう?」
 「あ、そう言えばそうだね」

 朱里は瑛に続いて隣の部屋へ行く。

 大きなベッドが二つと、壁にはウォークインクローゼットがあった。

 早速クローゼットの中を確認すると、カバー付きのハンガーが二つ掛けられている。

 (これかな?お姉さんの言ってたプレゼントって)

 そう思いながら、カバーのファスナーを下ろす。

 一つはダークネイビーのスーツ。
 そしてもう一つは、ボルドーのロングドレスだった。

 (…は?お姉さん、一体これは…)

 朱里はハンガーからドレスを取り出してぼう然とする。

 身体のラインを拾うようなタイトなそのドレスは、どう考えてもセクシーで大人っぽい雰囲気だ。

 (こ、こんなの恥ずかしくて着られない…)

 今までパーティーで着たドレスは、どれもふんわりとスカートが広がり、胸元もしっかり隠れるデザインのものばかりだった。

 「朱里?どうかした?」

 なかなか出て来ない朱里の様子を気にして、クローゼットに瑛が入って来た。

 「え、えっと、あの…。お姉さんが」

 慌ててドレスを背中に隠し、朱里はスーツを瑛に差し出した。

 「ディナーには、これを着て行ってって」
 「ああ、そうだな。あの店はドレスコードがあるし」

 えっ!と朱里は驚く。
 朱里が持って来た服は、ビジネススーツとちょっとしたよそ行きの私服で、およそフレンチレストランのドレスコードには匹敵しない。

 (と言うことは…。これを着るしかないってこと?)

 「もうすぐ7時だし、そろそろ支度しようか」
 「そ、そ、そうね。じゃあ私、着替えてくるね」

 とにかく一度着てみようと、朱里はそそくさとバスルームに向かった。
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