幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 ゆっくりと袖を通してから、鏡に映る自分の姿に朱里は半泣きになる。

 案の定大胆なそのドレスは、胸やウエストのラインもはっきりと分かってしまう。

 少し屈めば胸の谷間も見えてしまいそうだった。

 (ど、どうしよう)

 焦りつつなんとかごまかそうと、朱里は軽くシニヨンにしていた髪を下ろし、サイドから胸の上に流すように左肩の上でゆるく結った。

 (えーっと、あとはウエスト…。あーん、これはもうどうにもならない)

 カーディガンを腰に巻く?いや、そんなのおかしいに決まってる、とブツブツ考えながら、とにかくメイクを少し直す。

 「朱里?支度出来た?」

 ノックの音がして、瑛が声をかけてきた。

 「あ、うん。出来たけど、その、あの…」

 煮え切らない返事を不審に思ったのか、瑛が、入るぞと言いながらドアを開ける。

 ダークネイビーのスーツを着こなした瑛の姿に朱里が驚いて見とれていると、朱里の何倍もの驚きを隠さず、瑛が固まって目を見開いた。

 「あ、あの…。どうしよう、私。別の服に着替えた方がいいよね?」

 自信なさげに朱里が小さくそう言うと、瑛はハッと我に返る。

 「いや、そのままでいい。行こう」

 そう言って朱里の肩を抱いて歩き出す。

 あー、せめてショールでもあれば腕に掛けて腰のラインを隠せたのに…と朱里がまだブツブツ考えていると、部屋を出たところで瑛が朱里の腰に腕を回した。

 「…朱里、ウエスト細いんだな」

 触られているだけでも恥ずかしいのに、そんなセリフまで言われて、朱里はもう耳まで真っ赤になって絶句する。

 「これはちょっと、他のヤローには見せられない。個室にしてもらおう」

 だが雅は最初からそのつもりで予約してくれたらしく、何も言わなくても個室に案内された。

 席に着くと、ようやく朱里はホッとする。

 (ふう、これでとりあえず腰から下は見られないわよね)

 キャンドルが灯されたテーブルには、真っ白なクロスとオシャレな形に整えられたナフキン。

 洗練された部屋の雰囲気と、見慣れない紳士的な瑛の装いに、朱里の頬は既にお酒でも飲んだかのように赤く染まっていた。

 「朱里。何が食べたい?」

 メニューを見ながら瑛が聞く。

 「え、あの、瑛にお任せします」
 「じゃあ、ビーフのコースでいい?ステーキ食べたいだろ?」

 そう言って、瑛はいたずらっぽく笑う。

 いつもなら、もう何よ!と言い返すところだったが、朱里は照れて、うん、と小さく頷いた。

 「朱里…、ちょっ、その、可愛いのやめてくれる?」
 「え?何が?」
 「いや、だからその…。困るんだ、可愛すぎるから」
 「そ、そんなこと言われても…」

 朱里はますます赤くなる。

 するとタイミング良く、スタッフがオーダーを取りに来た。

 瑛がメニューを見ながら注文し、お酒は飲みやすいシャンパンを…と頼む。

 うやうやしく頭を下げてスタッフが退室すると、また部屋は二人きりになり静まり返った。
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