幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 「えっと、朱里」
 「はい。なあに?」
 「あの…、そうだ!明日、どこか行きたい所あるか?飛行機は遅い時間だから、観光してから帰ろう」
 「本当?いいの?」

 朱里の顔がパッと明るくなったのを見て、瑛は微笑んだ。

 「ああ。どこでも朱里の好きな所に行こう」
 「そしたらね、アニマルワールドに行きたい」
 「いいよ、そうしよう」
 「やったー!楽しみ」

 朱里がふふっと笑い、瑛も嬉しくなる。

 程なくして運ばれてきたシャンパンで乾杯し、美味しいフレンチを堪能してから部屋に戻る。

 すぐさま着替えようとする朱里を、瑛が止めた。

 「ちょっと待って、朱里」
 「え、何が?」
 「あの、そんなにすぐに着替えなくても…」
 「だって恥ずかしいんだもん」
 「いや、せめてソファでお茶飲むだけでも」

 とその時、ピンポーンと部屋のチャイムが鳴った。

 「あれ?誰だろ」

 瑛がドアを開ける。

 「夜分に失礼いたします。瑛様、この度は誠におめでとうございます。いやー、あんなに小さかった瑛坊ちゃまが、こんな日を迎えられるとは…。嬉しい限りでございます。こちらは当ホテルから、ささやかながらのお祝いでございます。どうぞお二人でお召し上がりくださいませ。それでは、失礼いたします」

 黒いスーツを着た50代くらいの男性が、ワゴンを押しながら入って来たかと思うと、ダーッとしゃべってまた出ていった。

 二人はしばしポカンとする。

 「あの方どなたなの?」
 「昔、副総支配人だった人で、今はこのホテルの総支配人なんだ」
 「ふうん…。なんだか感慨深そうだったけど、何のことなの?こんな日を迎えられるとはって」
 「さあ、俺にもさっぱり」

 朱里はドレスを着替えたかったことも忘れて、ワゴンに近付く。

 大きなトレイの上のシルバーのフタをそっと開けてみた。

 「わあ!」

 イチゴと生クリームのホールケーキ、赤いバラのフラワーアレンジメント、そして小さなカードが添えられていた。

 瑛がカードを開いて読む。

 「ご婚約、誠におめでとうございます?!え、どういうこと?」

 二人で顔を見合わせる。
 だが、思い当たる事は一つしかなかった。

 「姉貴のやつ…。何を勘違いしてるんだか」

 瑛はため息をついたが、朱里はケーキに目が釘付けだった。

 「瑛、このケーキ食べてもいい?」
 「ん?ああ、もちろん。今、紅茶淹れるよ」

 朱里がソファテーブルにケーキを置き、瑛がティーカップを並べる。

 二人は並んでソファに座り、美味しいケーキを味わった。
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