幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 「朱里。誕生日どこか行きたい所あるか?」

 夜、自宅に戻った朱里に瑛が電話で尋ねた。

 「私の誕生日?だってその日も仕事でしょう?」
 「そうだけど、定時で上がってさ、どこか食べに行こう。どこがいい?ホテルのレストランとか、おしゃれなお店とか?」

 すると朱里は、うーん、としばらく考える。

 「特にないなあ」
 「そんなこと言わずに、考えておいてよ。でないと姉貴とおふくろに、うちに来いって誘われるぞ。パーティーしたいってうるさくてさ」
 「あ、そうなの?だったら私もそれがいい」

 …は?と瑛は目が点になる。

 「いや、だって、うじゃうじゃ邪魔者がいるぞ?親父もおふくろも姉貴も、菊川も千代さんも」
 「やだ、邪魔者なんかじゃないでしょ?私、皆さんと一緒に賑やかに食事したいの。だめかな?」
 「だめじゃないけど…。その、俺としてはロマンチックなお店がいいかな、と」
 「じゃあ、瑛の誕生日にそのお店に行こうよ。ね?」
 「あ、うん。まあ、そうだな」

 計画が狂い、瑛は頭を抱える。

 (困ったなあ、どうするかなあ)

 「瑛?どうかした?」
 「あ、いや何も。じゃあうちでパーティーしよう。朱里の好きなステーキ用意するよ」
 「ううん、気にしないで。私はただ、賑やかに食事したいだけだから。くれぐれもお気遣いなくって伝えてね」
 「分かった」

 電話を切ってから、瑛はうーんと腕を組む。

 (やっぱりムードとかシチュエーションは大事だよな。どうしたもんか…)

 結局、朱里の誕生日当日まで瑛はブツブツ悩んでいた。
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