幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 その日は名古屋市内のホテルに泊まり、次の日、観光を兼ねて依頼されたホールまで足を伸ばす。

 ちょうど館長と話が出来て、また改めて打ち合わせすることを約束する。

 早めの夕食を食べてから二人は新幹線で東京に戻った。

 「そうかそうか、無事にお許しをいただけたんだね。ありがとう!朱里ちゃん。また改めてご両親にご挨拶に伺うよ」
 「いえ、そんな。おじ様、どうぞお気遣いなく。私の両親こそ、皆様に感謝していると言っていました。家柄の違う一般庶民の私の結婚を許してくださって」
 「何を言うのかね、朱里ちゃん。うちのドラ息子と結婚してくれるなんて、こちらこそ朱里ちゃんには感謝の気持ちでいっぱいだよ」

 ドラ息子…と、朱里は思わず苦笑いする。

 「ほら、お父様も早くサインして」

 雅が急かし、瑛の父は緊張の面持ちで婚姻届に署名する。

 「やったー!これでようやく二人は夫婦ね!」
 「姉貴、まだ役所に出してない」
 「はっ、そうだったわ。瑛、どこかに落っことしちゃだめよ!明日ちゃんと出しに行くのよ」

 皆に祝福され、朱里は幸せを感じながら、「栗田 朱里」としての最後の夜を過ごした。
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