幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 「お帰りなさい!」
 「ただいま、朱里」

 千代と一緒にダイニングテーブルに夕食を並べていた朱里は、ドアを開けて入って来た瑛に微笑む。

 ネクタイを緩める瑛からカバンを受け取ると、朱里は2階の部屋に上がった。

 するとすぐ後ろから瑛もついてきて、部屋に入った途端に朱里をうしろから抱き締めた。

 「ちょ、瑛?」
 「部屋で待っててって言ったのに」
 「え、別にいいでしょう?どこでだって」
 「だめだ。帰ってきたらすぐキスしたかったのに」

 耳元で囁かれる声に、朱里は一気に身体が熱くなる。

 「朱里、こっち見て」
 「え?」

 反射的に振り返った朱里に、瑛は深くキスをする。

 朱里の身体から力が抜け、カバンを落としそうになって慌てて瑛から離れた。

 「もう、瑛ったら…」
 「だって仕事中、ずっと我慢してたんだもん」
 「ちょ、何言ってんの?仕事中でしょ?」
 「そうだよなー。やばいな、毎日こんなんじゃ」

 朱里は呆れてため息をつく。

 「ちゃんと仕事してくださいね!」
 「はーい、分かってるって。ほら、夕食食べようぜ」
 「うん!」

 その日は瑛の父も帰宅が早く、夕食を食べながらあれこれと仕事の話をする。

 「マスコミの取材が予想以上に多くてな。なんだか知らんが、女性雑誌からも依頼が来たぞ。若きイケメン御曹司の素顔、とかなんとか?」
 「なんじゃそら?」
 「まあとにかく、しばらくは落ち着かんな。菊川、くれぐれも朱里ちゃんのそばを離れないでくれ」
 「かしこまりました」
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