幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 夕食後、朱里が自宅に荷物を取りに行こうとすると、菊川も付き添ってくれた。

 「ありがとうございます、菊川さん。身の回りの物を少しずつ運んでいるので、まだしばらくは家に取りに帰ったりしなくちゃいけなくて」
 「いつでもお供しますよ」

 二人で肩を並べて歩く。

 「菊川さん、ずっと私達のことを見守ってくださって、本当にありがとうございました」
 「どういたしまして。お二人が結婚されて、本当に感慨深いです。いやー、随分ヤキモキしましたけどね」
 「ふふ、すみません。私ったら聖美さんの前で、菊川さんに恋人のフリまでさせてしまって」
 「あー、ありましたね、そんなことも」

 懐かしみながら二人で笑う。

 「朱里さん。今だから話しますが…。もしあのまま瑛さんが聖美さんと結婚されたら、私は朱里さんをお支えしようと思っていました」

 え?と朱里が菊川を見上げる。

 「どんなに朱里さんが悲しまれるだろうかと心配でたまりませんでした。瑛さんと聖美さんをくっつけようと、私と恋人のフリまでして。寂しさを笑顔で隠す朱里さんをそばで見ていて、私まで辛かったです。朱里さん、瑛さんと結ばれて本当に良かったですね」
 「菊川さん…」

 優しい笑顔に、朱里の胸が詰まる。

 「ありがとうございます、菊川さん。いつも私達のことを一番に考えてくださって。でもこれからは、ご自分の幸せを考えてくださいね。私達はもう大丈夫ですから」

 朱里がそう言うと、菊川は嬉しそうに微笑んで頷いた。
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