幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
「瑛。来月のパーティー、同伴する女性は決まったのか?」
瑛はあからさまにため息をつく。
「だから、そんな人いないってば。だいたい、なんで彼女でも奥さんでもない人を連れて行かないといけないんだ?」
「それはお前、海外の方が多いパーティーだからな。女性を同伴していないと、この男は女性の一人も口説けないのか?何か性格に問題でも?などと思われかねない」
「なんだよそれ?偏見じゃないか」
「確かにな。だが、ビジネスの世界では大切なことだ。女性をスマートにエスコートして初めて、一人前の男として認められるんだ。会場の片隅で一人酒ばかり飲んでいる男とは、一緒に仕事しづらいと思われる」
はあ、と瑛は大きなため息をつく。
朱里は、なんだか大変な世界だなと思いながら、黙って食事の手を進めていた。
「お前に心当たりがないなら、私の方で進めてもいいか?あの話」
「あの話って?」
「ほら、都築製薬の会長のお孫さんとの話だよ。確か今年二十歳の短大生だったかな。一度お前に会わせたいと会長がおっしゃっていたから、それも兼ねてそのお嬢さんをパーティーに誘ったらどうだ?」
朱里はチラリと右隣の瑛の表情をうかがう。
うつむいてナイフとフォークを動かしているその横顔からは、心の内は読み取れない。
(瑛、お見合いするのかな。都築製薬か…。国内最大手の製薬会社だよね。凄いお嬢様なんだろうな)
そう思っていると、瑛が顔を上げた。
「いや、その話は待ってくれ」
「じゃあ誰か心当たりがあるのか?」
「今はない。けど、なんとかするから」
そう言って瑛は、ふと視線を左に移した。
隣に座っている朱里と目が合う。
(ん?)
首をかしげる朱里を、瑛はじっと見つめてくる。
(…んん?)
朱里はだんだん嫌な予感がしてきた。
「朱里…。頼みたいことがあるんだけど」
「いやー、無理!」
「まだ何も言ってないだろ!」
「いや、もうその雰囲気からして無理!」
「頼む!俺を助けると思ってさ」
瑛は両手を合わせて頭を下げてくる。
「無理だってばー!」
「朱里、勘違いしてないか?俺が頼もうとしてること、別に大したことじゃないぞ」
「え、そうなの?」
朱里は少しトーンダウンする。
「ああ。ちょっと着替えて美味しいもの食べに行くだけだ」
朱里は真顔で小さく尋ねた。
「どこへ?」
「それはその…。ホテルのパーティー会場」
「やっぱり!大したことじゃないのよー」
「大したことじゃないって!好きなもの、好きなだけ食べていいからさ。なっ?」
ピクリと朱里の眉が上がったのを見て、瑛は思わすニヤリとする。
「朱里の好きな美味しいステーキもあるぞ。確かあのホテルは、A5ランクの最高級松坂牛のステーキだったな」
朱里はゆっくりと瑛を見る。
ダメ押しとばかりに瑛は続けた。
「もちろんデザートも食べ放題。朱里、ケーキもムースもアイスもフルーツも、ぜーんぶ食べ放題だぞ」
ゴクリと朱里は喉を鳴らす。
「…ちょっと着替えるだけでいいのね?」
「ああ」
「…あとはひたすら食べてればいいのね?」
「そうだ」
「…分かった」
朱里が頷くと、瑛よりも大きな声で両親がやったー!と叫んだ。
「朱里ちゃん、ありがとう!朱里ちゃんが横にいてくれたら、瑛の株も一気に上がるわ」
「ええ?まさか、そんな」
「いや、本当だよ。朱里ちゃんみたいにチャーミングな女性は、会場中の男性から注目される。おい、瑛。しっかり朱里ちゃんをガードするんだぞ?菊川もな」
「はい。かしこまりました」
なんだか大ごとになってきた気がして、朱里は焦る。
「あ、あの、本当に私でいいのでしょうか?」
「朱里ちゃんがいいのよ!ね、あなた」
「ああ、もちろんだ。私からも頼むよ、朱里ちゃん」
そう言われては断れない。
朱里は覚悟を決めて頷いた。
瑛はあからさまにため息をつく。
「だから、そんな人いないってば。だいたい、なんで彼女でも奥さんでもない人を連れて行かないといけないんだ?」
「それはお前、海外の方が多いパーティーだからな。女性を同伴していないと、この男は女性の一人も口説けないのか?何か性格に問題でも?などと思われかねない」
「なんだよそれ?偏見じゃないか」
「確かにな。だが、ビジネスの世界では大切なことだ。女性をスマートにエスコートして初めて、一人前の男として認められるんだ。会場の片隅で一人酒ばかり飲んでいる男とは、一緒に仕事しづらいと思われる」
はあ、と瑛は大きなため息をつく。
朱里は、なんだか大変な世界だなと思いながら、黙って食事の手を進めていた。
「お前に心当たりがないなら、私の方で進めてもいいか?あの話」
「あの話って?」
「ほら、都築製薬の会長のお孫さんとの話だよ。確か今年二十歳の短大生だったかな。一度お前に会わせたいと会長がおっしゃっていたから、それも兼ねてそのお嬢さんをパーティーに誘ったらどうだ?」
朱里はチラリと右隣の瑛の表情をうかがう。
うつむいてナイフとフォークを動かしているその横顔からは、心の内は読み取れない。
(瑛、お見合いするのかな。都築製薬か…。国内最大手の製薬会社だよね。凄いお嬢様なんだろうな)
そう思っていると、瑛が顔を上げた。
「いや、その話は待ってくれ」
「じゃあ誰か心当たりがあるのか?」
「今はない。けど、なんとかするから」
そう言って瑛は、ふと視線を左に移した。
隣に座っている朱里と目が合う。
(ん?)
首をかしげる朱里を、瑛はじっと見つめてくる。
(…んん?)
朱里はだんだん嫌な予感がしてきた。
「朱里…。頼みたいことがあるんだけど」
「いやー、無理!」
「まだ何も言ってないだろ!」
「いや、もうその雰囲気からして無理!」
「頼む!俺を助けると思ってさ」
瑛は両手を合わせて頭を下げてくる。
「無理だってばー!」
「朱里、勘違いしてないか?俺が頼もうとしてること、別に大したことじゃないぞ」
「え、そうなの?」
朱里は少しトーンダウンする。
「ああ。ちょっと着替えて美味しいもの食べに行くだけだ」
朱里は真顔で小さく尋ねた。
「どこへ?」
「それはその…。ホテルのパーティー会場」
「やっぱり!大したことじゃないのよー」
「大したことじゃないって!好きなもの、好きなだけ食べていいからさ。なっ?」
ピクリと朱里の眉が上がったのを見て、瑛は思わすニヤリとする。
「朱里の好きな美味しいステーキもあるぞ。確かあのホテルは、A5ランクの最高級松坂牛のステーキだったな」
朱里はゆっくりと瑛を見る。
ダメ押しとばかりに瑛は続けた。
「もちろんデザートも食べ放題。朱里、ケーキもムースもアイスもフルーツも、ぜーんぶ食べ放題だぞ」
ゴクリと朱里は喉を鳴らす。
「…ちょっと着替えるだけでいいのね?」
「ああ」
「…あとはひたすら食べてればいいのね?」
「そうだ」
「…分かった」
朱里が頷くと、瑛よりも大きな声で両親がやったー!と叫んだ。
「朱里ちゃん、ありがとう!朱里ちゃんが横にいてくれたら、瑛の株も一気に上がるわ」
「ええ?まさか、そんな」
「いや、本当だよ。朱里ちゃんみたいにチャーミングな女性は、会場中の男性から注目される。おい、瑛。しっかり朱里ちゃんをガードするんだぞ?菊川もな」
「はい。かしこまりました」
なんだか大ごとになってきた気がして、朱里は焦る。
「あ、あの、本当に私でいいのでしょうか?」
「朱里ちゃんがいいのよ!ね、あなた」
「ああ、もちろんだ。私からも頼むよ、朱里ちゃん」
そう言われては断れない。
朱里は覚悟を決めて頷いた。