幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 屋敷に戻った菊川は、今度は瑛を車に乗せてサロンに向かう。

 朱里は2階で支度をしており、瑛は1階の男性フロアでタキシードに着替えた。

 軽く髪型をセットしてもらってからコーヒーを飲んでいると、朱里の支度が整ったと言われて顔を上げる。

 階段を下りてくる赤いドレスの女性に、思わず瑛は息を呑んだ。

 オフショルダーで肩を露わにし、スラリと伸びた綺麗な長い手を手すりに添えてゆっくりと下りてくる。

 キュッと絞ったウエストから、ふんわりと広がる軽いオーガンジーのスカートは波を打つように揺れ、左手でスカートの前をつまみながら、やがて瑛の前に歩み出た。

 「あ、朱里…?」

 そうに決まっているのに、思わず瑛は問いかける。

 それほど今目の前にいる女性は、自分の記憶の中の朱里とはかけ離れていた。

 「え、そうだけど…。やっぱり何か変かな?」

 朱里は少し不安げに自分を見下ろす。

 「いや、変じゃないよ。全然、うん」
 「そう?大丈夫かな…」

 小首をかしげてうつむく朱里の耳元で、綺麗に輝くイヤリングが揺れる。

 髪をアップにした朱里の首筋を見て、瑛は胸がドキリとした。

 「朱里さん。とてもお美しいですよ」

 菊川の言葉に朱里が笑顔になる。
 それを見て、瑛は一気に顔を赤らめた。

 「さあ、では参りましょうか」

 そう言った菊川が、瑛に目配せする。
 瑛はハッと我に返り、朱里の隣に行くと左腕を曲げて差し出す。

 「ありがとう」

 朱里は瑛に笑いかけて右手を添えた。

 「行ってらっしゃいませ」

 サロンのスタッフに見送られ、菊川の運転する車でパーティー会場のホテルに向かう。

 瑛は、隣に座る朱里をチラチラと横目で盗み見た。

 (わ、爪も綺麗にしてるんだ。朱里って指も長くて細いんだな)

 恥ずかしくてそれ以上は目線を上げられない。

 だが、自分の隣に座る朱里は、ドレスのせいなのか明るい華やかさを身にまとっていて、間違いなく魅力的な女性だった。
< 25 / 200 >

この作品をシェア

pagetop