幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 ホテルに到着し、パーティー会場へと向かいながら、朱里はなんだかドキドキしてきた。

 エスコートしてくれる瑛にそっと話しかける。

 「瑛、私大丈夫かな?」
 「ん?なにが?」
 「その、こういうパーティーって初めてだし。場違いじゃない?マナーとか平気かな…」

 うつむく朱里に、瑛は優しく笑いかける。

 「まったく心配いらない。朱里はそのままでいろ」
 「そう?大丈夫?」
 「ああ」

 大きく頷いてみせると、朱里はホッとしたように微笑んだ。

 (いや、別の意味で心配だらけだな…)

 瑛は心の中でひとりごつ。

 会場に足を踏み入れると、朱里は思わずわあ!と感嘆の声を漏らす。

 「凄いね、ゴージャスだね」

 すると早速、誰かがこちらを見て近づいてきた。

 「やあ、桐生さん。こんばんは」
 「佐野さん、こんばんは。ご無沙汰しています」
 「こちらこそ。今日はまた素敵なレディと一緒だね」

 佐野と呼ばれた30歳くらいのその男性は、優雅な大人の雰囲気で朱里に笑いかける。

 「初めまして。佐野コンツェルンの佐野 誠司です」
 「あ、初めまして。栗田 朱里と申します」

 朱里は慌てて名乗り、差し出された右手を握って握手する。

 朱里が手を離そうとした瞬間、佐野はもう一度朱里の手をギュッと握り、すっと指を滑らせながら思わせぶりにゆっくりと手を離した。

 (なに?今の…)

 朱里は手のひらに残った感触に首をひねる。

 そのあとも、瑛は次々と色んな人に声をかけられた。

 皆、瑛に一言挨拶してから朱里に自己紹介する。

 朱里はその度に名前を名乗り、握手を繰り返した。

 やがて外国人の男性がやって来た。

 ハイ! アキラ、と明るく瑛に声をかけ、握手をしてから朱里を見る。

 「ステキなレディね。ワタシはブライアンです」

 片言の日本語で名乗り、うやうやしく胸に手を当てて頭を下げる。

 「初めまして。栗田 朱里です」

 朱里は微笑んで右手を差し出した。

 するとブライアンは、すっと朱里の右手を下から掬い上げると、手の甲にチュッとキスをした。

 わざと音を立て、瑛に見せつけるようにキスしたあと、朱里の顔を覗き込んでフッと不敵な笑みを浮かべる。

 朱里は口元だけ緩めて笑うと、自分の手をブライアンから引いた。
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