幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 「朱里、テラスへ行こう」
 「え、ああ、うん」

 瑛が朱里の腰に手を回して促す。

 朱里を誰にも触らせまいとする瑛の素振りに、朱里はなんだかドギマギした。

 テラスのベンチに腰を下ろすと、菊川がドリンクを持ってきてくれる。

 「ありがとうございます」

 朱里は受け取って一口飲んだ。

 「美味しい!」

 思わず笑顔でそう言うと、菊川も微笑み返してくれる。

 「朱里、乾杯が終わったら菊川とここにいろ。菊川、絶対に朱里のそばを離れるなよ」
 「かしこまりました」

 いつもと違う雰囲気の瑛を、朱里はそっと見上げた。

 タキシードも良く似合っているし、何より醸し出すオーラが違う。

 (こんな瑛、知らなかった。お仕事の時はこんなにかっこいいんだな)

 そうこうしているうちにパーティーが始まる時間になり、朱里は瑛と一緒に再び会場内に戻る。

 主催者の挨拶のあと皆で乾杯し、人々は一気に動き出す。

 瑛のもとにも何人かがやって来るが、瑛はグッと朱里の腰を抱いたまま、まるで朱里に触れるなと言わんばかりだった。

 挨拶を交わしながら徐々にテラスの方へと移動する。

 ようやく外に出ると、瑛は朱里を先程のベンチに座らせた。

 菊川が綺麗に料理を盛り付けたプレートを渡してくれる。

 「うわー、美味しそう!」

 目を輝かせる朱里に、瑛はようやくいつもの笑顔をみせた。

 「たらふく食えよ、朱里」
 「うん!ありがとう」

 瑛は微笑んで頷くと、朱里を頼むと菊川に言い残し、会場内に戻って行った。
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