幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 時間になり、黒の衣装で揃えた四人はロビーに向かった。

 大きな拍手で迎えられ、四人は深々と一礼する。

 ゆっくりと椅子に座り、それぞれ呼吸を整える。

 やがてお互いに目配せして頷くと、一斉に楽器を構えた。

 ふうと小さく息を吐いてから、朱里が身体で合図を出す。

 タイミングを合わせて最初の一音を響かせると、観客席の雰囲気も一変した。

 皆がハッとしたように音に入り込んでいく。

 最初の曲は「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」より第一楽章アレグロ。

 モーツァルト作曲の有名なこの曲は、誰でも一度は耳にしたことがあるだろう。

 前列に座る年配のご夫婦が、微笑みながら小さく身体を揺らして聴き入ってくれているのが目に入り、朱里は嬉しくなる。

 (みんなに音楽の楽しさが伝わりますように)

 四人で息を揃えながら、その場の雰囲気を楽しみつつ心を込めて演奏する。

 一曲目が終わり、大きな拍手の中、四人は立ち上がってもう一度お辞儀をした。

 他の三人が座ると、朱里はマイクを手に話し始める。
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