幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 「皆様、こんにちは!私達は青南大学管弦楽団カルテットチームです。本日はこのような素敵な演奏の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。短い時間ではありますが、どうぞ最後までごゆっくりお楽しみください」

 再び拍手が起こり、朱里は笑顔で応える。

 「最初にお送りしたのは、モーツァルト作曲アイネ・クライネ・ナハトムジークより第一楽章アレグロでした。皆様も一度は耳にされたことがあるのではないでしょうか。続いての曲も、有名な一曲です。曲名は、あえて今は申しません。どうぞ考えながらお聴きくださいね」

 朱里はマイクを置くと席に座り、皆で間を取ってから次の曲を弾き始めた。

 ああ!という反応が客席から伝わってくる。

 良く響くロビーに、たっぷりと美しく奏でられるメロディ。

 朱里はこの曲を弾ける幸せを感じながら、仲間と音楽を紡いでいく。

 最後の一音まで響かせると、やがて静けさが戻ってくる。

 朱里達がホッと息をつくと、大きな拍手が湧き起こった。

 「ありがとうございます。さて、曲名はお分かりになりましたか?」

 すると最前列のおじいさんが手を挙げた。

 「パッヘルベルのカノン!」
 「おおー、素晴らしい。大正解です!よくご存知でしたね。クラシック音楽、お好きなんですか?」
 「いや、全然。でもこの曲は好きじゃ。グッドチョイス!」

 親指を立てるおじいさんに、客席がドッと笑いに包まれる。

 「ありがとうございます!おじいさんの為にこの曲を選びました!」
 「え?本当か?」
 「あ、ごめんなさい。嘘です」
 「なんじゃ。あー、びっくりした」

 朱里とおじいさんのやり取りに、また笑いが起こった。
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