幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 「すっかり夏の気配ですね」
 「そうですね。聖美さんは夏はお好きですか?」
 「どちらかというと苦手です。秋が一番好きですね」
 「なるほど。そんな感じがします」
 「え、そうでしょうか?」

 二人で肩を並べながら、庭に咲く花々を見て回る。

 「もう少し先に温室もありますよ」
 「まあ!拝見してもよろしいでしょうか?」
 「もちろん。ご案内します」
 「はい」

 すると、ふと聖美が足を止めた。

 「どうかしましたか?」
 「ええ、あの。瑛さん、何か聞こえませんか?」

 え?と瑛は耳を澄ませる。

 風に乗って、かすかにヴァイオリンの音色が聞こえてきた。

 「ああ、こちらからですね」

 そう言って瑛は歩き始めた。

 朱里の家を隔てる塀の近くまで来ると、はっきりとメロディが聞き取れる。

 「まあ!ヴァイオリン?!」
 「ええ。先程の彼女が弾いているんです」
 「そうなのですね。なんて素敵なのかしら…。私、この曲大好きなんです」

 へえ、と瑛は感心する。

 「私は音楽はさっぱりで。この曲は何という曲なのですか?」
 「マスカーニ作曲の歌劇『カヴァレリア・ルスティカーナ』の間奏曲ですわ」

 瑛は目が点になる。

 「は?な、なんだかもの凄く覚えにくそうですね」
 「ふふふ、本当に」

 初めて聖美が笑顔を見せる。
 白いワンピースと長い髪が風に揺れ、上品な仕草の聖美はとても清らかに見えた。
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