幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 次の週の金曜日。

 約束通り朱里は瑛と一緒に、菊川の運転で聖美を迎えに行った。

 「うっひゃー!これまた大きなお屋敷ねぇ」

 洋風の広い屋敷の前に停めた車から瑛が降り、玄関に入って行くと、程なくして聖美を連れて戻ってきた。

 「朱里さん、こんばんは!」
 「こんばんは、聖美さん。素敵なドレスねえ」
 「朱里さんこそ!とってもお綺麗です」
 「ありがとう!このドレス、雅お姉さんからお借りしちゃったの」
 「そうなのですね。とてもお似合いです」

 朱里は、雅から借りたネイビーのノースリーブドレスにシルバーのショール、そして聖美は、爽やかなグリーンのパフスリーブのドレスだった。

 お洒落してコンサートに行くのはいつ以来だろう。
 朱里は道中、ワクワクする気持ちを抑え切れなかった。

 「私、ヴァイオリンコンチェルトの中で、チャイコフスキーが一番好きなの」
 「私もなんです!どうしましょう、感激のあまり泣いてしまうかも…」
 「大丈夫よ、聖美さん。その前に私が号泣してると思うから」

 まあ!と聖美は楽しそうに笑う。

 やがて菊川がホールのエントランスにゆっくりと車を停める。

 菊川が開けてくれたドアから朱里が降りると、瑛の手を借りて車を降りた聖美が、慌てたように手を引っ込めた。

 きっと、朱里に遠慮したのだろう。

 朱里は瑛に目配せして彼女をエスコートするよう促すと、自分はさっさと歩き出した。

 「それではお二人様、お席までご案内しまーす。どうぞこちらへ」

 ツアーガイドのように言って、ふふっと二人を振り返る。

 聖美は瑛の腕に捕まりながら、照れたように微笑んだ。
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