幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 弓の動きを見事に合わせるオーケストラと、感情がほとばしるようなソリストの演奏の中、瑛はふと隣に座る聖美に目をやった。

 ステージを凝視しながら目を潤ませている横顔に、ふっと笑みを漏らす。

 車の中で話していた通り、感動で涙が込み上げてきたのだろう。

 そう思いながら、そのまま奥の朱里に目を移す。
 と、瑛は驚きの余り目を見開いた。

 (あ、朱里?!)

 朱里はダバダバと涙をこぼしながら、眉を八の字に下げて号泣していた。

 時折しゃくり上げるように肩を震わせている。

 (う、嘘だろ?え?なんでそんなに泣けるんだ?)

 他の観客を見渡すと、静かに聴き入っている人の中に、うつらうつらと居眠りしている人もいた。

 どう見ても、朱里だけが異様に泣いている。

 (え、あいつ、特殊人間なのか?どこの世界からやって来た?)

 瑛はもはや演奏には集中出来ず、時折朱里を見ては眉をひそめていた。
< 56 / 200 >

この作品をシェア

pagetop