幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 ようやく菊川が車から降り、助手席と聖美の横のドアを開けた。

 瑛が聖美の手を取り、屋敷に入って行く。

 「菊川さん!」

 開いているドアから身を乗り出して、朱里は車の横に立つ菊川を呼んだ。

 「はい、何でしょう?」
 「何でしょうじゃないでしょ!どうして助けてくれなかったのよ?!」
 「助ける…とは?」
 「もう、しらばっくれて!知ってるのよ?菊川さんが笑いを堪えてたの」
 「おや、あんなに慌てていらっしゃったのに。案外冷静なんですね、朱里さん」

 朱里はますますキーッとなる。

 「まったくもう!瑛も菊川さんも、性格悪すぎるわよ!」

 そう叫んだ時、瑛が戻ってきた。

 「朱里、でっかい声が玄関まで聞こえてきたぞ」

 嘘!と朱里は口を押さえる。

 「今さら遅いっつーの。菊川、帰ろうぜ」
 「はい、かしこまりました」

 するとなぜだか、瑛は助手席ではなく後部座席の朱里の隣に座った。

 「ちょっと、前に座りなさいよ」
 「やだね。狭いんだもん」
 「あんたね!聖美さんっていうフィアンセがいるのよ?もうちょっと自覚持ちなさいよ」
 「どうだろ。彼女、俺よりお前の方が好きみたいだしな」
 「それはあんたが彼女の相手をしないからでしょ?!もっとマメに声かけてあげなさいよ!」
 「あ、そうだ。言い忘れてた」

 そう言って急に瑛は朱里の顔を見つめる。

 「な、何よ?」
 「お前、コンサートであり得ないくらい号泣してただろ?で、今も顔、ぐっちゃぐちゃだぞ」

 えっ!!と朱里は絶句して頬を押さえる。

 「ほ、ほ、ほんとに?」
 「ああ。な?菊川」
 「はい、そうですね」

 はあー?!と朱里は声を裏返らせる。

 「そうですねって、菊川さんまで!」
 「仕方ないだろ?事実なんだから。朱里こそ、もうちょっと女としての自覚持てよな」

 ムキーッと朱里は車の中で地団駄を踏んだ。
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