幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 聖美の屋敷のガーデンは、綺麗な花々が咲き乱れる花園だった。

 「素敵ねー」

 朱里はうっとりとガーデンに目をやりながら、紅茶を口に運ぶ。

 「朱里さん、良かったら今度ここでヴァイオリンを弾いて頂けません?お花を見ながら朱里さんのヴァイオリンを聴いてみたいです。とっても素敵でしょうね」
 「えええー?!いやいや、それは無理よ。私の酷い音で花がしおれたら困るわ。でもそうね、ハチ避けにはなるかも?」
 「まあ、朱里さんったら!」

 聖美はおかしそうに笑う。

 (良かった、聖美さんが元気になって。誘拐されそうになったんだもの、きっと凄く怖かっただろうな。お嬢様って本当に大変)

 そこまで考えて、朱里はハッとする。

 (やだ!私ばっかり聖美さんとしゃべって。フィアンセがいたんじゃないのよ)

 朱里は、ちょっと失礼と立ち上がると、カップとソーサーを手に、ガーデンの片隅で菊川と話している瑛の所へ行く。

 「瑛、聖美さんが呼んでるわよ」
 「ん、ああ。分かった」

 瑛はゆっくりと歩き出し、先程まで朱里がいた椅子に座る。

 聖美が急に恥じらったようにうつむき、二人は何やら話し始めた。

 (ふふ、良かった)

 朱里が微笑んで眺めていると、ふいに菊川の声がした。

 「おやおや、朱里さんはなかなかの策士ですね」
 「あら?何のことかしら」

 朱里は澄ました顔で、持っていたティーカップに口をつける。

 「これは私も気をつけませんと。朱里さんにはかないませんね」
 「ふふふ、そうよ。私、色々企んでるんだから」

 え?と驚く菊川に、朱里はグッと近づいて顔を寄せる。

 「菊川さん。私ね、あれから考えたの。瑛が自分で自分の幸せを考えないなら、私が瑛を幸せな気分にしてやろうと思って」
 「してやろう?!って、朱里さん、一体何を…」
 「むふふ。まずは瑛と聖美さんにラブラブな雰囲気になってもらいます。ね、菊川さんも協力してくださいよ?」

 は?と菊川はキョトンとする。

 「いいから、ほら。行きましょ!」

 朱里は強引に菊川の腕を取った。
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