幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 昼休みが終わり、朱里は香澄と別れて講義室へ向かう。

 すると後ろから、君、ちょっといい?と声をかけられた。

 振り向くと、爽やかな笑顔を浮かべた男性が朱里を見ている。

 「はい、何でしょうか?」

 朱里は向き合って尋ねた。

 「うん、あのさ。さっき俺、学食で君達の後ろのテーブルにいて、偶然会話が聞こえてきたんだ。君、桐生ホールディングスの御曹司と幼馴染なんだって?」

 嫌な予感がして、朱里は表情を曇らせる。

 「俺、今四年生で、ちょうど就職活動してるところなんだけど、本命は桐生ホールディングスなんだ。もし良かったら、君の幼馴染を紹介してくれないかな?一緒に遊ぶ時に、俺も誘ってくれたら嬉しいんだけど」

 朱里はうつむいて小さくため息をついてから顔を上げる。

 「あの、申し訳ないのですが、それは出来かねます。私とあなたは友人でもなんでもないですし、そんな理由で彼に紹介することは出来ません」
 「じゃあさ、君、まずは俺とつき合ってくれない?」

 …は?と、朱里は目を見開く。
 
 「いったいなぜ、私があなたと?」
 「いいじゃない。俺、これでも結構モテる方なんだよ」
 「な、何を言ってるんですか?だからってどうして…」
 「俺、今まで自分から告白して断られたこと一度もないんだぜ。それとも君、今誰かとつき合ってるとか?」

 いえ、と小さく朱里が下を向いて答えると、じゃあいいじゃない!と、男性は嬉しそうに笑う。

 朱里はきゅっと口元を引き締めてから、顔を上げた。

 「お断りします。私はあなたとおつき合いする気も、幼馴染をあなたに紹介するつもりもありません。それでは」

 あ、待って!と呼び止める声を聞きながら、朱里は足早に立ち去った。
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