幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
「それでは、次の曲をご紹介します。フランツ・リスト作曲の『愛の夢』より第3番をお送りします」
そこまで言ってから、朱里は少しマイクを離して深呼吸した。
「皆様にとって大切な人はどなたでしょうか?ご家族、恋人、親友、仲間、きっと多くの人の顔を思い浮かべていらっしゃると思います。そして私にも大切な人がいます。私がこの曲に込める想いは、温かい時間を一緒に過ごしてくれた人への感謝の気持ちです。どうか皆様のこの先の人生も、たくさんの愛に包まれますように。願いを込めて心いっぱい演奏いたします。どうぞお聴きください」
朱里はマイクを置いて座り、大きく息を吸って気持ちを整えた。
顔を上げて三人を見る。
美園、光一、そして奏。
皆が朱里を見て力強く頷いた。
朱里も頷き返すとヴァイオリンを構え、目を閉じて自分の心に耳を澄ませる。
そしてゆっくりと身体を使って弓を弾き、メロディを奏で始めた。
懐かしい光景が脳裏に蘇る。
小さな朱里と小さな瑛。
二人はいつも一緒だった。
転んで泣き出した朱里の頭をなで、手を繋いで一緒に帰ってくれた瑛。
綺麗なちょうちょを捕まえて、朱里の虫かごに入れてくれた瑛。
自転車の練習で、いつまでも後ろを支えて走ってくれた瑛。
どんな時も、瑛は朱里を助けてくれた。
いつもそばにいてくれた。
「瑛くん、ありがとう!だいすき!」
そう言って小さな朱里が瑛に笑いかける。
そう、それはあの頃のいつもの光景。
温かく優しい日々。
愛に満ち溢れていた幸せな日々。
(今までありがとう、瑛)
いつしか朱里は、切なさに目を潤ませていた。
もうあなたの近くにはいられない。
それでも私は、いつまでもあなたに感謝する。
ありがとう、そしてどうか幸せに…。
やがて曲は朱里のカデンツァになり、他の三人の音が消えた。
胸に込み上げる幸せと切なさと感謝、そして大きな愛。
朱里は、ありったけの想いを音に乗せる。
感情をほとばしらせながら一気に駆け上がると、他の三人の音が加わり、パーッと世界が明るく広がるのを感じた。
朱里はひたすらその感動を味わいながら、空間いっぱいに音を響かせる。
(どうか届いて、私の想い)
降り注ぐ音が、愛で満ち溢れていますように。
やがてゆっくりと音は落ち着き、朱里の胸にすっと溶け込んでいった。
静けさが戻り、朱里はそっと目を開ける。
視界がぼやけていた。
(私、泣いてる?)
顔を上げると、美園や光一、そして奏が優しくこちらを見て微笑んでいた。
奏が大きく頷いてみせ、朱里がホッとして微笑んだ時、客席から大きな拍手が湧き起こった。
四人は立ち上がり、深々とお辞儀をする。
鳴り止まない拍手の中、朱里は胸を詰まらせながら客席を見渡して微笑んだ。
そこまで言ってから、朱里は少しマイクを離して深呼吸した。
「皆様にとって大切な人はどなたでしょうか?ご家族、恋人、親友、仲間、きっと多くの人の顔を思い浮かべていらっしゃると思います。そして私にも大切な人がいます。私がこの曲に込める想いは、温かい時間を一緒に過ごしてくれた人への感謝の気持ちです。どうか皆様のこの先の人生も、たくさんの愛に包まれますように。願いを込めて心いっぱい演奏いたします。どうぞお聴きください」
朱里はマイクを置いて座り、大きく息を吸って気持ちを整えた。
顔を上げて三人を見る。
美園、光一、そして奏。
皆が朱里を見て力強く頷いた。
朱里も頷き返すとヴァイオリンを構え、目を閉じて自分の心に耳を澄ませる。
そしてゆっくりと身体を使って弓を弾き、メロディを奏で始めた。
懐かしい光景が脳裏に蘇る。
小さな朱里と小さな瑛。
二人はいつも一緒だった。
転んで泣き出した朱里の頭をなで、手を繋いで一緒に帰ってくれた瑛。
綺麗なちょうちょを捕まえて、朱里の虫かごに入れてくれた瑛。
自転車の練習で、いつまでも後ろを支えて走ってくれた瑛。
どんな時も、瑛は朱里を助けてくれた。
いつもそばにいてくれた。
「瑛くん、ありがとう!だいすき!」
そう言って小さな朱里が瑛に笑いかける。
そう、それはあの頃のいつもの光景。
温かく優しい日々。
愛に満ち溢れていた幸せな日々。
(今までありがとう、瑛)
いつしか朱里は、切なさに目を潤ませていた。
もうあなたの近くにはいられない。
それでも私は、いつまでもあなたに感謝する。
ありがとう、そしてどうか幸せに…。
やがて曲は朱里のカデンツァになり、他の三人の音が消えた。
胸に込み上げる幸せと切なさと感謝、そして大きな愛。
朱里は、ありったけの想いを音に乗せる。
感情をほとばしらせながら一気に駆け上がると、他の三人の音が加わり、パーッと世界が明るく広がるのを感じた。
朱里はひたすらその感動を味わいながら、空間いっぱいに音を響かせる。
(どうか届いて、私の想い)
降り注ぐ音が、愛で満ち溢れていますように。
やがてゆっくりと音は落ち着き、朱里の胸にすっと溶け込んでいった。
静けさが戻り、朱里はそっと目を開ける。
視界がぼやけていた。
(私、泣いてる?)
顔を上げると、美園や光一、そして奏が優しくこちらを見て微笑んでいた。
奏が大きく頷いてみせ、朱里がホッとして微笑んだ時、客席から大きな拍手が湧き起こった。
四人は立ち上がり、深々とお辞儀をする。
鳴り止まない拍手の中、朱里は胸を詰まらせながら客席を見渡して微笑んだ。