幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
 涙を堪えながら大きな拍手を送っていた聖美は、ふと隣の瑛を見た。

 次の瞬間、驚いて拍手の手が止まる。

 瑛は半ばぼう然としながら、じっと前を見据えていた。

 その目には涙が浮かんでいる。

 「…瑛さん」

 瑛は、自分が泣いていることにも気づいていないようだった。

 その視線の先を追って聖美は前を見る。

 大きな拍手に応えるように、朱里が笑顔で頷いていた。

 朱里の演奏、そして瑛の涙。
 二人の想いと互いの絆。

 頭に浮かんだ考えを打ち消すように、聖美は膝の上でギュッと両手を握りしめた。
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