幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
「それで次回の演奏会は、ずばりクリスマスコンサートにするつもりです」
わざと明るく仕切り直すように言って、朱里は演奏曲目を載せたチラシをテーブルに置く。
朱里が作った、赤と白のクリスマスらしいデザインのチラシだった。
早速、雅達が手に取る。
「うわー、素敵ね!クリスマスソング満載!」
「ええ。どなたにも親しみやすい定番のクリスマスの曲を集めました。それで、今回は持ち時間が1時間あるので、間に休憩を挟んでニ部構成にしようかと」
「あら、いいわね。えっと、ニ部は『くるみ割り人形』なのね!」
「まあ、それは素敵!クリスマスコンサートにぴったりじゃない」
「うんうん、楽しみだわ!」
雅は母と顔を見合わせた。
『くるみ割り人形』は、チャイコフスキーが作曲したバレエ音楽で、クリスマス・イブにくるみ割り人形を贈られた女の子、クララが、夢の中でおとぎの国を旅する物語だ。
誰でも一度は耳にしたことがある、有名な曲が散りばめられている。
「その『くるみ割り人形』なんですけど、短い曲と曲の間に語りを入れたいと思っています。イメージで言うと、音楽を聴きながら絵本を読んでいるような」
へえー、なるほど!と感心する雅に、朱里はグイッと近づいた。
「お姉さん!その語り役を、お姉さんにお願い出来ませんか?」
「えっ、私?!無理よ、そんなの。やったこともないし」
「大丈夫です。優くんに絵本を読んであげているような感じでお願いしたいんです。お姉さんならピッタリ!」
「優に絵本を?それなら毎晩やってるけど…」
「そんな感じで是非!お願いします」
うーん、とまだ渋る雅に母が口を開く。
「雅、やってみたら?優もきっと、そんなあなたの姿を見て何か感じてくれるわよ」
「…そうかな」
床で積み木を並べていた優が、皆の視線を感じたのか、ふと振り返る。
「ねえ、優。ママが絵本読むの、好き?」
「うん、しゅきー」
にっこり笑う優に、参ったとばかりに雅は笑う。
「優にああ言われたらやるしかないわね。朱里ちゃん、がんばってみる!」
「わあー、ありがとうございます!とっても嬉しいです!すぐに原稿作って、次回持ってきますね。あと、私が代理で読んで、実際に音楽と一緒に録音した音源も」
「うん!楽しみにしてる。よろしくね」
「こちらこそ!よろしくお願いします。おば様、このお話、おじ様にも伝えていただけますか?クリスマスコンサートは、こんな構成でいく予定ですと」
「分かったわ。でもあの人、そろそろ帰ってくる頃じゃないかしら」
するとその時、リビングのドアが開いて瑛の父が現れた。
「ただいま」
あら、噂をすれば、と三人で笑い合う。
しかし父の後ろから顔を出した瑛を見て、朱里は慌てて下を向く。
(え、瑛?予想外に早く帰って来たな。じゃあ、そろそろおいとましないと)
「あの、それでは私はこれで」
そう言って立ち上がると、雅と母が怪訝な面持ちで朱里を見る。
「朱里ちゃん、コンサートの話をするんじゃなかったの?」
「あ、は、はい。そうなんですけど。ちょっと時間が…。あの、詳しくはお姉さんとおば様からご説明お願い出来ますか?何かあればいつでもご連絡ください。それでは、お邪魔しました」
「え、朱里ちゃん?」
強引にまくし立て、朱里は頭を下げるとリビングを出る。
急いで靴を履くと、玄関にいた菊川が朱里の様子をうかがいながらもドアを開けてくれた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
そそくさと朱里は外に出た。
わざと明るく仕切り直すように言って、朱里は演奏曲目を載せたチラシをテーブルに置く。
朱里が作った、赤と白のクリスマスらしいデザインのチラシだった。
早速、雅達が手に取る。
「うわー、素敵ね!クリスマスソング満載!」
「ええ。どなたにも親しみやすい定番のクリスマスの曲を集めました。それで、今回は持ち時間が1時間あるので、間に休憩を挟んでニ部構成にしようかと」
「あら、いいわね。えっと、ニ部は『くるみ割り人形』なのね!」
「まあ、それは素敵!クリスマスコンサートにぴったりじゃない」
「うんうん、楽しみだわ!」
雅は母と顔を見合わせた。
『くるみ割り人形』は、チャイコフスキーが作曲したバレエ音楽で、クリスマス・イブにくるみ割り人形を贈られた女の子、クララが、夢の中でおとぎの国を旅する物語だ。
誰でも一度は耳にしたことがある、有名な曲が散りばめられている。
「その『くるみ割り人形』なんですけど、短い曲と曲の間に語りを入れたいと思っています。イメージで言うと、音楽を聴きながら絵本を読んでいるような」
へえー、なるほど!と感心する雅に、朱里はグイッと近づいた。
「お姉さん!その語り役を、お姉さんにお願い出来ませんか?」
「えっ、私?!無理よ、そんなの。やったこともないし」
「大丈夫です。優くんに絵本を読んであげているような感じでお願いしたいんです。お姉さんならピッタリ!」
「優に絵本を?それなら毎晩やってるけど…」
「そんな感じで是非!お願いします」
うーん、とまだ渋る雅に母が口を開く。
「雅、やってみたら?優もきっと、そんなあなたの姿を見て何か感じてくれるわよ」
「…そうかな」
床で積み木を並べていた優が、皆の視線を感じたのか、ふと振り返る。
「ねえ、優。ママが絵本読むの、好き?」
「うん、しゅきー」
にっこり笑う優に、参ったとばかりに雅は笑う。
「優にああ言われたらやるしかないわね。朱里ちゃん、がんばってみる!」
「わあー、ありがとうございます!とっても嬉しいです!すぐに原稿作って、次回持ってきますね。あと、私が代理で読んで、実際に音楽と一緒に録音した音源も」
「うん!楽しみにしてる。よろしくね」
「こちらこそ!よろしくお願いします。おば様、このお話、おじ様にも伝えていただけますか?クリスマスコンサートは、こんな構成でいく予定ですと」
「分かったわ。でもあの人、そろそろ帰ってくる頃じゃないかしら」
するとその時、リビングのドアが開いて瑛の父が現れた。
「ただいま」
あら、噂をすれば、と三人で笑い合う。
しかし父の後ろから顔を出した瑛を見て、朱里は慌てて下を向く。
(え、瑛?予想外に早く帰って来たな。じゃあ、そろそろおいとましないと)
「あの、それでは私はこれで」
そう言って立ち上がると、雅と母が怪訝な面持ちで朱里を見る。
「朱里ちゃん、コンサートの話をするんじゃなかったの?」
「あ、は、はい。そうなんですけど。ちょっと時間が…。あの、詳しくはお姉さんとおば様からご説明お願い出来ますか?何かあればいつでもご連絡ください。それでは、お邪魔しました」
「え、朱里ちゃん?」
強引にまくし立て、朱里は頭を下げるとリビングを出る。
急いで靴を履くと、玄関にいた菊川が朱里の様子をうかがいながらもドアを開けてくれた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
そそくさと朱里は外に出た。