Good day !
無事に巡航に入り、ふうと小さく息を吐いてから、大和は隣の恵真に目を向ける。

管制官とのやり取りや離陸時のコールなど、PMとしての働きに申し分はなかった。

今も熱心にモニターをチェックし、フライトプランを確認している。

(クルージングの間くらい、少しは肩の力を抜いたらいいのに。まさか国際線でも、そうやって何時間も張りつめたままなのか?)

そう思っていると、急に恵真が両目をギュッとつぶり、何かを堪えるように身体を硬くした。

「おい、どうした?大丈夫か?」

もしや体調に異変が?と、思わず顔を覗き込む。

「あ、はい。大丈夫で…っくしゅん!」
「…は?」

大和は目をしばたかせる。

(え?まさか、くしゃみを我慢していたとか?)

思わず笑い出し、Bless you と声をかけると、すみません、と恵真はうつむく。

大和は笑いを収めた。

「どうしてそうすぐに謝る?」
「え、あの。キャプテンの邪魔をしてはいけないと思いまして…」
「は?だからくしゃみを我慢したのか?」
「あ、その、まあ、はい」

はあ、と大和はため息をつく。

「くしゃみくらいで動揺して操縦を誤るようではパイロットは務まらない。それともそんなに俺の操縦は危うかったか?」
「いえ!そんな。とんでもないです」
「だったらくしゃみでもしゃっくりでも、我慢せずにしたらいい」
「あ、くしゃみはたまに出るんですけど、しゃっくりは今のところフライト中に出たことはないです」
「は?いや、そう真面目に返されると困るんだけど…」
「ええ?!あの、すみません」

身を縮こめてから、またチェックを再開した恵真に、これは伊沢も心配になる訳だと大和は思った。
< 14 / 70 >

この作品をシェア

pagetop