Good day !
「おお!佐倉くん。見事なランディングだったよ。この風の中、他の機はゴーアラとダイバートの嵐なのに、君だけスマートに一発で下りるなんて。いやー、さすがだな」

オフィスに戻ると、ベテランの機長が近づいてきた。
教官も務める年輩の機長に、恵真は大和の一歩後ろで頭を下げる。

「いえ、タイミングが合っただけです。あの一瞬がなければ自分もゴーアラウンドしていました」
「いやでも、その一瞬を見逃さないのが君の実力だよ。本当によくやってくれた」

あくまで冷静に答える大和に、ベテラン機長は頬を緩めて嬉しそうに話す。

「ありがとうございます。コーパイの彼女もとても冷静だったので、二人で協力して下りることが出来ました」

急に視線を向けられ、恵真は、ひえっと姿勢を正す。

「いえ、あの、私は何も。全て佐倉キャプテンのお力です」

さらに一歩下がりながら慌てて答えると、ベテラン機長が笑顔で話しかけてきた。

「君もよくやってくれたね。名前は?」
「あ、はい!藤崎と申します」
「藤崎くんか。覚えておこう。佐倉くんとのフライトは、なかなか良い経験になっただろう?」
「はい!とても勉強になりました。大変貴重な経験をさせて頂きました」
「そうだろうね。君も頑張りなさい。とにかく今日はお疲れ様。ゆっくり休んでくれ」
「はい、ありがとうございます」

その後のデブリーフィング中も、大和は色々な人に声をかけられ、労われていた。

「んー、なかなか落ち着いて話が出来ないな。まあ今日は疲れているだろうし、この辺りで終わりにしようか」

恵真としては詳しく聞きたいことが山ほどあったが、疲れているであろう大和を引き留めることは出来ない。

素直に頷いて席を立った。

「佐倉キャプテン、本日は本当にありがとうございました」
「ああ、お疲れ様」

改めて深々と頭を下げてから、恵真は大和と別れて更衣室に向かった。
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