Good day !
「理論は良く分かりました。頭の中にイメージも出来ます。あとは感覚を確かめたいです。実践して頂けますか?」
「じ、実践?!」
「はい。特に、風とのせめぎ合いの中の一瞬のタイミング、これを体感したいです。女の子の抵抗の中に生まれるわずかなランディングのチャンス。これを掴めるかどうかが大きなポイントですよね」
「う、うん。そうだな」
「では、お願いします」

は?!と大和は思わず身を引く。

「えっと、お願いしますって何を?」
「実践です。私がPMを務めますので、そうですね、アプローチング ミニマムの辺りからお願いします」

そう言って恵真は、ソファに座ったまま大和の正面に身体を向けて、真剣なパイロットの表情になる。

「では参ります。Approching minimum」
「チェ、Checked」
「Minimum」
「Landing」

大和はじっと恵真を見つめて少しずつ顔を近づける。

恵真の頭の後ろに右手を添え、自分の顔を右に傾けながら唇を寄せると、ギリギリの所で止まった。

右手に力を入れて引き寄せようとすると、恵真が力を入れて抵抗する。

大和の力と恵真の力が反発し合い、上手く定まらない。

すると、大和の力が少し緩んだのに合わせて恵真の力もふっと緩んだ。

(今だ!)

お互いがそう思った時、大和は強く恵真に口づけた。

そのまま恵真の頭を抱え込み、身体を密着させる。

やがてゆっくりと力を抜き、恵真の身体をそっと離した。

二人の頭の中に、しっかりと滑走路に着陸して減速する飛行機がイメージされる。

「ナイスランディング」

恵真がポツリと呟いた。

「ああ、そうだな…って、あ!」

大和は我に返って慌てふためく。
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