Good day !
「す、すまん!つい、その、ごめん!本当に悪かった」

ランディングのシミュレーションだったが、普通に考えれば紛れもなくキスだ。

(ギリギリの所で止めるべきだった)

大和が下を向いてオロオロしていると、恵真の落ち着いた声が聞こえてきた。

「佐倉キャプテン。私、ちゃんと感覚が分かりました。本当ですね、一瞬ふっと緩む感覚、確かにありましたね。なるほど…」

納得したように小さく頷いている。

「今度は私がPFをやらせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「は?!あの、えっと…」
「すみませんが、キャプテンはPMをお願い致します」
「わ、分かった。じゃあ、Approching minimum」
「Checked」
「Minimum」
「Landing」

そして恵真は大和にすっと近づく。
大和の頭の後ろに手を置くと、自分の顔を右に傾け、唇が触れるギリギリの所まで大和に顔を寄せた。

グッと頭が引き寄せられる力を感じて、大和はそれに抵抗した。
しばらくはお互いが力を入れ続けて身体がブレる。

だが、一瞬恵真の力が緩んだ時、自然と大和の抵抗も緩んだ。

(今だ!)

恵真は一気に大和に唇を押し当てる。
そして大和を自分の胸に抱き寄せた。
二人の身体は正面で密着する。

恵真は少しずつ身体から力を抜き、大和から離れると、最後にふうと小さく息をついた。

「…ランディング、出来ましたよね?」
「ああ。でも…」
「でも?」
「んー、接地の力が弱かったかな?タイミングは良かったけど、もう少し強めにギアを接地させないと跳ねるぞ」
「あ!なるほど、確かに。横風強いのにギアが跳ねたら大変ですよね」

うんうんと、大きく頷いている。

大和は、さすがにこれ以上は…と思い、口調を変えた。
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