Good day !
「笑う元気があるならちょっと安心ね」
「…え?」
「でもさ、伊沢。あんたは私と違って7年間も想い続けてきたんだから、やっぱり相当堪えてるはずだよ。いい?ちゃんと自分の心を労りなよ」

伊沢は、ふっと笑みを漏らす。

「すげーな、こずえ。経験値高すぎ。百戦錬磨だな」
「何それ。私が片っ端から失恋しまくってるみたいに聞こえるんですけど!」
「そうじゃないけどさ。まあ、こずえが色んなことを経験して、それを乗り越えながら強く生きてるんだなーと思った」
「確かにねー。打たれ強くはなったかな。もうさ、男なんていらないかも、私」
「ははは!そうだよ、こずえは一人でも逞しく生きていけるさ」
「それ!まさにそう言われてフラレたんですけど!!」

ええー?!と思わず伊沢は声を上げる。

「その、整備士の男に?」
「そうよ!君は一人でも逞しく生きていけるタイプだろ?だから大丈夫だよ、ですって。そんな訳あるかーー!!!」
「あはは!失礼な男だな」
「笑ってるあんたも失礼よ!」

ひとしきり笑ったあと、伊沢はすっかり気持ちが軽くなったのに気づいた。

「こずえ、ありがとな。俺、最後に恵真にちゃんと話すわ」
「…分かった。伊沢の伝えたいこと、ちゃんと恵真に話してきな」
「ああ。ちゃんと言える気がする。お前からもらったパワー、ハンパないから」
「またそれー?!だから、私も失恋したてなの!」
「はは!分かったって。今度飯でも行こうぜ」
「オッケー。朝までコースだからね。覚悟しといて」
「ラジャー」

電話を切ったあと伊沢は小さく、サンキュー、こずえと呟いた。
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