【SR】だるまさんが転んだ
世界的にも名前が知られてきた観光地は、隣の国にある首都の名前だ。


俊介が原島から渡されたチケットは、その首都までだった。


今の俊介が居るのは、その国から夜の内に船で国境を越えた隣国。


二十数年間、政府側と反政府側で内戦が続いている地。


日本からも、内戦が落ち着きを見せた時に経済援助として金が流れているが、内戦の繰り返しで発展の兆しなど何処にも見えない国だ。


勿論、使われている言葉は英語じゃないが、俊介にとって問題ではなかった。


もう三十年近くも前に、怪しげなパブで良い仲になった女が、この地の出身だと言っていたのを、飛び立った飛行機の中で思い出したのだ。


浅黒い肌に潤んだ漆黒の瞳、唇から甘く漏れる声に、男心を擽るスタイルを思い出していたが、それを打ち消して当時を思い返していた。


興味心が旺盛でなくてはジャーナリストなど務まらないと、その当時女から言葉を習っていたのだ。


記憶が薄れてきているとは言っても、この地に来てから確かめた結果、日常会話や普通に話す分に問題は無いと実感していた。
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