【SR】だるまさんが転んだ
それは、日本で愛煙していたセブンスターほどの満足は与えてくれなかったが、小舟とトラックの荷台で溜められたストレスを発散するには十分だった。


肺奥まで吸い込んだ煙を最後まで吐き出し、俊介は漸く視線を上げた。


今まで通ってきた道よりは、幾分平坦に見える通り。


通りの端には、戦後の闇市のように、様々な商品が地べたに並べられている。


これまで自炊を避けてきた俊介が、土の付いた不格好な野菜の名称など知るはずもなかった。


次いで目に止まったのは、中身の記述が全くない銀色の缶詰。


錆び付いた大きな缶に入れられた小麦、変色して蠅が集っている何かの肉、衣服用の畳まれた布。


似たような店が十数個並んでいる。


町までと言って此処で降ろされたのだから、此処が町なのだろう。


目の前に居る全ての人間の目が、虚ろに淀んでいた。
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