【SR】だるまさんが転んだ
今でこそ都会に出て記者として働いている俊介だが、元は貧しい農村出身だった。


畦道など、見た事が有る所か通学路だったものだが、それでも此処まで酷いものは整備されていたはずだ。


十八で田舎を出、以来四十年を都会で過ごしたが、数年前に帰省したあの田舎ですら、アスファルトの道路になっていた。


記者として様々な現場を取材してきたが、あの田舎以上に環境整備の点で酷いと思ったのは、これが初めてだった。


舌を噛まないよう、幌を張ったトラックの天井に頭をぶつけないよう気をつけながら、手を伸ばした水筒から寸での所で手を引っ込めた。


此処で水を飲んでしまったら、後は水を売っている所など無いだろう。


この忍耐強さだけは、若い記者に真似出来ない所だと、俊介は小さく胸を張った。


それが誰の目にも映らない事も分かっていた。


そして、お払い箱間近の自分でなければ、こんな所には送り込まれなかっただろうとも…。
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