【SR】だるまさんが転んだ
それだけは明日になったら話すと言って、ヴェンはバラックの方へ消えていった。


レコーダーに記憶させる事を忘れていたが、俊介はヴェンから語られた一字一句を覚えていた。


とてもじゃないが、忘れられるものではなかった。


俊介は背中を預けていた木から離れ、その場で仰向けになった。


朱色だった空は西に流れ、既に星空が広がっている。


其処で漸く、俊介は随分時間が経っていたのだと気付いた。


この星空に描く予定の花火は、明後日を迎えられるか否かにかかっている。


だが、俊介はそれほど悲観的にはならなかった。


ヴェンが自分を呼んだのは、この国をどうにかして欲しいからだとしか考えられず、それが夜空に広がる星の輝きとリンクしたからだった。


この国で生まれ育った者が、それもこれからに可能性を十分に秘めている少年が、この国の事を思っている。


それが、この救いようのない国のせめてもの救いだと、俊介はそう感じずにいられなかった…。
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