【SR】だるまさんが転んだ
「チャオミンはその事を…。」


「知らないし教えるつもりもない。だから言葉も覚えさせてないんだ。尤も、この国では身体を売って金を稼ぐ女が殆どだから、話せなくてもそれほど困る事もない。」


俊介は新たに足された情報で、推測していたものを脳内で修正した。


ヴェンの深い色を見せる瞳は、過酷という二文字の中で色づけされたものでは足りなすぎたと。


「チャオミンもあの歳で身体を売っているのか?」


「いや、俺の目の届く範囲ではさせていない。だが、チャオミンぐらいの少女を好む奴は大勢居る。武器や麻薬を買いにくる中や、シサツ?で来る日本人の中にもな。」


日本人という言葉に信じられないと思いたい俊介だったが、現実を見てきたヴェンに反論する事は出来なかった。


そして、内戦は膠着状態だったが、飢えに苦しむ子供達の為に物資援助を陳情するつもりだと、視察から帰ってきて報道陣にそう答えていた、政治家の顔を踏みつけてやりたかった。


沈痛な面持ちの裏にある顔を、日本中に晒してやりたいと俊介は思った。


同じ日本人として恥ずかしく思うと同時に、それと同じ種族であるにも関わらず、それでも俊介の力も借りたいと思っているヴェンの心を察した。
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