【SR】だるまさんが転んだ
屋敷までの距離は遠く、等間隔で金網の外に立っている兵の視線が俊介に刺さる。


それから逃れるように歩調を早め、俊介はヴェンの背後に付いた。


「なぁヴェン、さっきの言葉は…。」


「勿論嘘だ。気にするな。」


俊介は大きく溜め息を吐き、再度自分に言い聞かせた。


迷宮の出口を射す光、この国の明日を照らす光はヴェンだと。


それだけで、随分気が楽になる。


「広い屋敷だけど、庭には何も無いんだな。」


俊介は庭と表現したが、屋敷の建つ広大な土地には草の一本すら生えてはいなかった。


尤も、砂土の上では植物も育ち辛いのは分かる。
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