【SR】だるまさんが転んだ
俊介が言ったのはそう言うものではなく、富豪の邸宅にありそうな石像や噴水を指したものだった。


「何かを置くと影が出来る。影は侵入者の姿を隠す。シュンスケも覚えておくと良い。最も危険な人間とは、最も安全を好むものだ。」


ヴェンの言葉が示すように、金網の上に設置されているライトは、屋敷に向かう二つの影しか作ってはいなかった。


そういうものかと感心した俊介は、ヴェンの肩越しに見えた赤く鋭い六つの瞳に身体を硬くした。


針金を絞ったような筋肉は屈強さを、それを包む滑らかな皮膚は俊敏さを物語っているように見える。


ヴェンと俊介を発見したソレは、いきり立ったように吠え始めた。


吠えは不穏な侵入者だと警報を、飛びかかろうとする様子はそれを即座に排除しようとしている。


訓練を受けたドーベルマン。


その三匹を前にして、俊介は首筋に伝う汗を拭えずにいた。


「心配ない。」
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