【SR】だるまさんが転んだ
ヴェンの平板な声は、屋敷に着く前に聞いた、芥子畑や山の裏にあるという武器工場を紹介していた時と変わらなかった。


「だるまを…作る？」



只ならぬものを感じ取り、俊介の身体は固まっていた。


鼓動だけが激しさを増していく。


「そうだ。元は五体満足な女をそのまま売っていたが、売ってから隙を見て逃げられたりしたらしいんだ。だから足を切る。注文があれば腕もな。それでダルマの完成だ。」


俊介はヴェンから語られる言葉に、頷きもせず相づちも打たず立ち尽くしていた。


…目の前で行われていたであろう行為を想像し、俊介は言葉を無くしていた。


「何をそんなに驚いているんだ？元々この国にはダルマなんて言葉は無かった。ダルマと言い始めたのは、中国人や日本人だったと聞いているぞ。」


人間が人間としての権利を剥奪し、蹂躙している。


そんな場所が存在して良いはずがない。


「…嘘、だろう？」


嘘なら嘘と、冗談なら冗談だと言って貰えれば、俊介はどんなに安堵出来るだろうと思っていた。
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