【SR】だるまさんが転んだ
「な、んだ…なんで笑ってるんだ。」


「いや、たんなる思い出し笑いさ。足を切られたダルマがな、それでも逃げようと必死に藻掻くんだ。でも足が無いから身体のバランスがとれず、皆同じように前のめりに転ぶんだよ。」


逃げようと必死に藻掻くその光景を思い浮かべ、俊介は静かに目を閉じた。


「ハハハハハハハ!」


何も受け付けないと心を閉ざした俊介の耳に、堪えきれず吹き出したようなヴェンの高笑いだけが届く。


俊介は滲む涙もそのままに、天を仰ぐように天井を仰いだ。


子供の頃、だるまさんが転んだで振り返ると、友達がその姿勢を我慢出来ずに転ぶ事があった。


俊介も、そんな友達の姿を見て笑ったものである。


楽しい事を余り知らなかった子供の頃だから、友達が転ぶ姿だけで可笑しかった。


娯楽の無い国で育ったヴェンの目には、この光景が可笑しいのかもしれない。
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