Lost at sea〜不器用御曹司の密かな蜜愛〜
* * * *

 それからしばらくして、萌音とお客様との三人でアクセサリーについての打ち合わせが始まった。

 誰かと一緒にアクセサリーを作り上げることは想像以上に楽しく、何かを失ってばかりだった六花はお客様の希望を形にしていく作業を通じて、言葉では言い表せないほどの充実感を覚えていた。

 萌音さんと一緒にもっと何かを作り出したいーーそう強く思うようになっていったのだ。

 しかし無事に出産を終えて赤ちゃんとの生活が始まると、翔の言っていた通りになった。初めは不安ばかりだった育児だが、赤ちゃんの顔を見たり匂いを嗅いだりすることで心が癒され、頑張ろうと思えた。

 目元や口の形は、どう見ても宗吾に似ている。彼のことを思い出しながら胸が締め付けられるのは、彼のことを愛し始めていたから……。愛することに時間は関係ないのだと知った。

 ようやくその事実を認められたのは、娘が愛おしくて仕方ないから。彼女を通して浮かび上がる宗吾の姿に、今はただ思いを馳せるしかなかった。

 彼の元から去ったのは私が決めたこと。今更後悔したって仕方ない。今は宗吾が誰かと幸せであることを祈るしかなかった。
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