Lost at sea〜不器用御曹司の密かな蜜愛〜
「萌音さん」
「ん?」
「私ね、ここに引っ越してきて良かったって心から思うんですよ。皆さんに出会えて毎日が楽しくて充実してる」
「六花さん……!」
「だからいつか私が言いたくなった時は聞いてくださいね。むしろいつも何も聞かないでくださってありがとうございます」
心に引っかかっているものは、いずれは忘れられるはず。そう思うことで、余計な考えは心の外へと追い出した。
「それよりも萌音さんが作ったドレス、いつ見ても素敵ですねぇ」
「えっ、本当? 嬉しいけどなんか照れる……」
両手で顔を挟んで照れる姿は出会った頃と変わらず可愛いらしいままだ。
「由利先輩が萌音さんを大好きな気持ちが、なんかすごくよくわかります」
「いきなりどうしたの⁈」
後から教えてもらったのだが、二人は小学生と中学生の時に出会い、お互いにその時が初恋だったらしい。そんな運命的な出会いってある? それからずっとお互いを想い続けて結ばれるなんて素敵過ぎる。
初恋をしてからずっと忘れられなかったと言った彼の言葉が、今なら心の底から頷けた。
「お二人って本当に仲が良いから羨ましい」
六花の言葉に驚いたように、萌音は瞳を瞬かせる。
もし私と宗吾が一緒になったって、元々犬猿の仲だったわけだし、こんなに穏やかな夫婦にはなれなかっただろうな……そう考えて苦笑する。
だけど彼の部屋で一緒に過ごした一ヶ月の間は、一度も喧嘩はなかった。宗吾はすごく優しかったし、六花自身も優しくされることに飢えていたのかもしれない。彼が与えてくれる空気感があまりにも心地良くて、つい甘えてしまったのだろう。
もしあの一ヶ月に見せてくれた宗吾が本当の彼の姿だったとしたら? 妊娠したことを否定されるかもと怯えて逃げ出したりせずに、彼にきちんと向き合っていれば、私自身がもっと心を開いていたらーー想像とは違う何かが待っていたのだろうか。
やったことより、やらなかったことの後悔が大きいという言葉があるように、あの日の選択は今も心に引っかかっている。
「ん?」
「私ね、ここに引っ越してきて良かったって心から思うんですよ。皆さんに出会えて毎日が楽しくて充実してる」
「六花さん……!」
「だからいつか私が言いたくなった時は聞いてくださいね。むしろいつも何も聞かないでくださってありがとうございます」
心に引っかかっているものは、いずれは忘れられるはず。そう思うことで、余計な考えは心の外へと追い出した。
「それよりも萌音さんが作ったドレス、いつ見ても素敵ですねぇ」
「えっ、本当? 嬉しいけどなんか照れる……」
両手で顔を挟んで照れる姿は出会った頃と変わらず可愛いらしいままだ。
「由利先輩が萌音さんを大好きな気持ちが、なんかすごくよくわかります」
「いきなりどうしたの⁈」
後から教えてもらったのだが、二人は小学生と中学生の時に出会い、お互いにその時が初恋だったらしい。そんな運命的な出会いってある? それからずっとお互いを想い続けて結ばれるなんて素敵過ぎる。
初恋をしてからずっと忘れられなかったと言った彼の言葉が、今なら心の底から頷けた。
「お二人って本当に仲が良いから羨ましい」
六花の言葉に驚いたように、萌音は瞳を瞬かせる。
もし私と宗吾が一緒になったって、元々犬猿の仲だったわけだし、こんなに穏やかな夫婦にはなれなかっただろうな……そう考えて苦笑する。
だけど彼の部屋で一緒に過ごした一ヶ月の間は、一度も喧嘩はなかった。宗吾はすごく優しかったし、六花自身も優しくされることに飢えていたのかもしれない。彼が与えてくれる空気感があまりにも心地良くて、つい甘えてしまったのだろう。
もしあの一ヶ月に見せてくれた宗吾が本当の彼の姿だったとしたら? 妊娠したことを否定されるかもと怯えて逃げ出したりせずに、彼にきちんと向き合っていれば、私自身がもっと心を開いていたらーー想像とは違う何かが待っていたのだろうか。
やったことより、やらなかったことの後悔が大きいという言葉があるように、あの日の選択は今も心に引っかかっている。