Lost at sea〜不器用御曹司の密かな蜜愛〜
宗吾に押し倒され、六花は驚いたように目を見開いた。何もないとは思わなかったが、まさか再会した当日にこんなことになるなんて思わなかった。
愛のない契約結婚なんていらないのに……私には愛生との穏やかな暮らしさえあればいいんだからーー。
「あの……どいてくれない?」
六花にそう言われた宗吾の顔が一瞬歪んだような気がした。その顔は大学の時、失恋して教室で泣いていた時と同じように見えた。
どうしてそんなに傷付いたような表情になるの? 意味がわからない。
「……今回はあの時の延長だってことを忘れるなよ」
「どういうこと?」
宗吾の手が六花のドレスのスカートをたくし上げ、太腿の上に指を滑っていく。
「やっ……ちょっとダメだってば!」
「わかってる。俺からはしない約束だったよな。だけど六花次第とも言ったよ。もしお前が俺を求めたらーー」
「そんなことは絶対にないから大丈夫よ……あなたを求めたりしないから安心して」
はっきりとそう言うが、太腿の上をなぞる宗吾の指の動きに体が震える。その指がショーツの上に到達すると、わざとゆっくり撫でるような動きを繰り返されていく。何度も絶頂を迎えたあの日の記憶が蘇り、少しずつ動悸が激しくなっていった。
お願いだから、それ以上私に触れないでーー私の気持ちを煽らないでよ。今流されたら後戻り出来なくなるのは目に見えている。
「約束が違う……何もしないんじゃないの?」
六花は宗吾の手を止めるように自分の手を重ね、乱れそうになる息遣いを悟られないように、唇を噛み締めて平静を装った。
彼女が堕ちないことがわかると、宗吾は諦めたように手を止めて俯いた。
「……一つだけいいか?」
「呑める要求ならね」
「大したことじゃないよ。二人でいるなら、名前でちゃんと呼び合いたいんだ」
六花を見つめる宗吾の視線が、どこか悲しげな光を帯びているように見え、反射的に瞳を逸らしてしまう。
「まぁ一週間とはいえ擬似恋愛をするわけだし、それくらいはね……。とりあえずわかったから、そこからどいてくれる? 宗吾」
名前を呼ぶのは久しぶりだったから、少し照れ臭さを感じる。それは宗吾もだったのか、僅かだが口角が上がったように見えた。
宗吾は六花の上から退くと、彼女に手を差し出す。こういうところはやっぱり育ちの良さが出るわよねーーその手を素直に取り、六花は体を起こした。
口下手だし言葉遣いは悪いけど、彼が優しくて良い人だってことは知ってる。だからこそこれ以上の深みにははまりたくないのに。どうして運命の輪は意図しない方向へ回り出すのだろう。
「今日は早く休みたいから、先にシャワー浴びてもいい?」
「あぁ、もちろん」
了承を得てから、六花はユニットバスに入っていった。
愛のない契約結婚なんていらないのに……私には愛生との穏やかな暮らしさえあればいいんだからーー。
「あの……どいてくれない?」
六花にそう言われた宗吾の顔が一瞬歪んだような気がした。その顔は大学の時、失恋して教室で泣いていた時と同じように見えた。
どうしてそんなに傷付いたような表情になるの? 意味がわからない。
「……今回はあの時の延長だってことを忘れるなよ」
「どういうこと?」
宗吾の手が六花のドレスのスカートをたくし上げ、太腿の上に指を滑っていく。
「やっ……ちょっとダメだってば!」
「わかってる。俺からはしない約束だったよな。だけど六花次第とも言ったよ。もしお前が俺を求めたらーー」
「そんなことは絶対にないから大丈夫よ……あなたを求めたりしないから安心して」
はっきりとそう言うが、太腿の上をなぞる宗吾の指の動きに体が震える。その指がショーツの上に到達すると、わざとゆっくり撫でるような動きを繰り返されていく。何度も絶頂を迎えたあの日の記憶が蘇り、少しずつ動悸が激しくなっていった。
お願いだから、それ以上私に触れないでーー私の気持ちを煽らないでよ。今流されたら後戻り出来なくなるのは目に見えている。
「約束が違う……何もしないんじゃないの?」
六花は宗吾の手を止めるように自分の手を重ね、乱れそうになる息遣いを悟られないように、唇を噛み締めて平静を装った。
彼女が堕ちないことがわかると、宗吾は諦めたように手を止めて俯いた。
「……一つだけいいか?」
「呑める要求ならね」
「大したことじゃないよ。二人でいるなら、名前でちゃんと呼び合いたいんだ」
六花を見つめる宗吾の視線が、どこか悲しげな光を帯びているように見え、反射的に瞳を逸らしてしまう。
「まぁ一週間とはいえ擬似恋愛をするわけだし、それくらいはね……。とりあえずわかったから、そこからどいてくれる? 宗吾」
名前を呼ぶのは久しぶりだったから、少し照れ臭さを感じる。それは宗吾もだったのか、僅かだが口角が上がったように見えた。
宗吾は六花の上から退くと、彼女に手を差し出す。こういうところはやっぱり育ちの良さが出るわよねーーその手を素直に取り、六花は体を起こした。
口下手だし言葉遣いは悪いけど、彼が優しくて良い人だってことは知ってる。だからこそこれ以上の深みにははまりたくないのに。どうして運命の輪は意図しない方向へ回り出すのだろう。
「今日は早く休みたいから、先にシャワー浴びてもいい?」
「あぁ、もちろん」
了承を得てから、六花はユニットバスに入っていった。