Lost at sea〜不器用御曹司の密かな蜜愛〜
今回購入したもの全て宗吾が支払った。六花は自分で払うつもりだったのに、気付くと会計が終わっていたのだ。
自分では買えないようなものもたくさんあったので最初はモヤモヤした六花だったが、なんだか宗吾が楽しそうに買い物をしていたので、ありがたく受け取ることにした。
カフェで軽くランチを済ませてホテルに戻る道中で母からメッセージが届く。昨夜から今朝にかけての娘の写真が何枚も送られてきたので、宗吾にバレないようにこっそりと確認する。笑った顔も泣いた顔もこんなに身近に感じるのに、目の前で触れることが出来ないのが寂しかった。
荷物をカバンに詰め、買ってもらったオーバーサイズのシャツとボトムにロングカーディガンに着替える。髪も久しぶりに下ろし、普段なら危ないからと外していたネックレスも着けると、まるで昔に戻ったような気分になる。
いつの間にか母親になっているのよね……でも鏡の中の自分を見て、気持ちが高揚するのを感じた。
それからホテルをチェックアウトして、駐車場に停めてあった宗吾の車に荷物を積み込み、ようやく目的地へと出発をする。窓から人の流れをぼんやりと眺めていたが、少しすると高速道路の入口が見え、宗吾の車も流れに乗っていく。
何もしないで助手席に座っているのは、やはりどこか気楽だった。隣にいるのが知っている人物だからかもしれない。昨日に比べると、少しだけ警戒心が解けたような気がした。
黒のTシャツにベージュのチノパン姿は、昨日のスーツとのギャップがあり過ぎて、少しだけときめいた。
「なんか大学生の頃を思い出すね。ほら、卒業式の後にサークルのみんなで旅行に行ったじゃない」
「あぁ、ワイナリー直営のホテルに泊まったよな。ワンボックスを借りて、何故か俺が運転手」
「だって運転慣れしてたのが宗吾だけだったから。他のみんなはペーパードライバーだったし。あの時飲んだワイン、どれも美味しかったなぁ」
「そうだな……みんな酔い潰れてた。俺は控えめにしたのに」
「そうそう。宗吾は二日酔いにならないように気をつけてくれたんだよねぇ。その節はありがとうございました」
久しぶりに会ったし、話すことが見つかるか心配だったが、六花の口からは自然と言葉が溢れだす。
「ようやく仲良くなれたかと思ったのに、すぐに卒業だもん。だからあの旅行は本当に楽しかった思い出しかないんだよ」
大学入学以来の犬猿の仲だった六花と宗吾がとうとう和解したことを、サークル仲間たちはまるで自分たちのことのように喜んでくれた。
考えてみれば、二人のギスギスした関係により、仲間たちには気を遣わせてしまっていた。それでもどうにかして関係を改善させようと、皆あの手この手を使ったが、どれも上手くはいかなかった。
それが突然嘘のように仲良くなったので、記念に旅行に行って思い出を作ろうと言ってくれたのだ。
自分では買えないようなものもたくさんあったので最初はモヤモヤした六花だったが、なんだか宗吾が楽しそうに買い物をしていたので、ありがたく受け取ることにした。
カフェで軽くランチを済ませてホテルに戻る道中で母からメッセージが届く。昨夜から今朝にかけての娘の写真が何枚も送られてきたので、宗吾にバレないようにこっそりと確認する。笑った顔も泣いた顔もこんなに身近に感じるのに、目の前で触れることが出来ないのが寂しかった。
荷物をカバンに詰め、買ってもらったオーバーサイズのシャツとボトムにロングカーディガンに着替える。髪も久しぶりに下ろし、普段なら危ないからと外していたネックレスも着けると、まるで昔に戻ったような気分になる。
いつの間にか母親になっているのよね……でも鏡の中の自分を見て、気持ちが高揚するのを感じた。
それからホテルをチェックアウトして、駐車場に停めてあった宗吾の車に荷物を積み込み、ようやく目的地へと出発をする。窓から人の流れをぼんやりと眺めていたが、少しすると高速道路の入口が見え、宗吾の車も流れに乗っていく。
何もしないで助手席に座っているのは、やはりどこか気楽だった。隣にいるのが知っている人物だからかもしれない。昨日に比べると、少しだけ警戒心が解けたような気がした。
黒のTシャツにベージュのチノパン姿は、昨日のスーツとのギャップがあり過ぎて、少しだけときめいた。
「なんか大学生の頃を思い出すね。ほら、卒業式の後にサークルのみんなで旅行に行ったじゃない」
「あぁ、ワイナリー直営のホテルに泊まったよな。ワンボックスを借りて、何故か俺が運転手」
「だって運転慣れしてたのが宗吾だけだったから。他のみんなはペーパードライバーだったし。あの時飲んだワイン、どれも美味しかったなぁ」
「そうだな……みんな酔い潰れてた。俺は控えめにしたのに」
「そうそう。宗吾は二日酔いにならないように気をつけてくれたんだよねぇ。その節はありがとうございました」
久しぶりに会ったし、話すことが見つかるか心配だったが、六花の口からは自然と言葉が溢れだす。
「ようやく仲良くなれたかと思ったのに、すぐに卒業だもん。だからあの旅行は本当に楽しかった思い出しかないんだよ」
大学入学以来の犬猿の仲だった六花と宗吾がとうとう和解したことを、サークル仲間たちはまるで自分たちのことのように喜んでくれた。
考えてみれば、二人のギスギスした関係により、仲間たちには気を遣わせてしまっていた。それでもどうにかして関係を改善させようと、皆あの手この手を使ったが、どれも上手くはいかなかった。
それが突然嘘のように仲良くなったので、記念に旅行に行って思い出を作ろうと言ってくれたのだ。