Lost at sea〜不器用御曹司の密かな蜜愛〜
「さて……どうしようか?」

 宗吾が六花の耳元で囁く。それだけで体が震え、彼を求めて疼き出すのがわかった。

 きっとさっきのサービスエリアでのキスは、このための前戯だったんだわ。私の体のスイッチを入れるための。

 どうしよう……宗吾が欲しい……私の中を宗吾でいっぱいにして、満たされたいーー。でもそんなこと言えない。

 六花は顔を上げるとおずおずと宗吾にキスをした。これが精一杯の返事だった。認めたくないけど、宗吾の誘惑に負けたのだ。

 体を浮かせて彼の上に跨るように座り直そうとしたが、突然宗吾に抱き上げられてしまう。彼は慌てて部屋に入るとベッドルーム急ぎ、六花をそっと下ろした。

 不思議そうに宗吾を見ていた六花だが、宗吾が枕元に置いてあった箱からコンドームを取り出したのを見て合点がいく。そうか……外にはなかったから。

 六花の足を広げると、宗吾は再び彼女の体に舌を這わせながら愛撫を繰り返していく。 セックス自体が久しぶりの六花にとっては、時間をかけて慣らしてくれるこの時間は安心に繋がった。

 そして宗吾のモノがゆっくりと挿入され、体を貫かれた瞬間腰が砕けそうになった。

 気持ち良さと満足感で心も体も満たされる。

「六花……!」

 何度も突き上げられ、耳元で名前を囁かれ、絶頂に到達した六花は力が抜けたようにベッドに沈み込んだ。

 しかし乱れる呼吸をキスで飲み込まれ、更に宗吾が動き続けるので何も考えられなくなる。

「もうダメ……!」
「じゃあやめる?」

 急に動きを止めて宗吾は六花の中から出ようとしたため、思わず彼の体に足を回してしまう。それから六花は赤くなった頬を膨らませて、顔を背けようとした。だが再びキスをされ引き戻される。

「……意地悪」
「じゃあ六花は意地っ張りだ」

 宗吾の優しい笑顔と甘いキスに、心も体もとろとろに溶けてしまう。セックスってこんなに気持ち良かったっけ……二度目の絶頂を迎えても、いつまでも宗吾と繋がっていたかった。

 やっぱりしてしまったーーそう思いながらも、僅かに感じる罪悪感と、体中を満たすほどの満足感に、心はスッキリとしている。

 宗吾の手に頭を撫でられ、六花はうっとりと目を伏せる。

「もう少しこのままでいたいけど、そろそろ食事の時間かな。六花、動ける? もう一度一緒に露天風呂に行こうか?」
「……今はいい。一人で行ってきて」

 ぐったりしたまま動けなくなっている六花を、宗吾は笑顔で見つめる。

「じゃあ俺もいいや。後にしよう」

 さりげない優しさが懐かしくて、それ以上何も言葉にしたくなかった。

「たくさん運動した後だから、きっと食事も美味しいだろうな」
「もう、くだらないこと言って……」

 六花は苦笑する。あーあ……こんな簡単に、それも短時間で堕ちるなんて。私の決意は弱すぎる。

 なのに宗吾の腕の中で彼の匂いに包まれると、それだけで安心してしまう自分がいた。
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