Lost at sea〜不器用御曹司の密かな蜜愛〜
◇ ◇ ◇ ◇
彼女が寝たのを確認してから、宗吾はベッドから降りてガウンを羽織る。それから脱ぎ散らかした服を拾いソファに置き、上着のポケットからスマホを取り出すと、六花が眠るベッドの縁に腰掛ける。
どうして六花が朝夏さんのことを知っているのだろうかーー宗吾は今までのことを思い出そうと、頭をフル回転させる。だがいくら考えてみても、彼女のことを誰かに漏らしたことはなかった。
しかも六花の言い方では、俺が未だに朝夏さんのことを引きずっていて、彼女と結婚出来ない代わりに六花と結婚するのだと思い込んでいるようだ。
なんでそうなるんだよ……ただそう考えると、今までの六花の行動は納得できる。あれほど頑なに結婚を拒み続けるのは、俺の気持ちが朝夏さんにあると思っているからだろう。
朝夏さんのことを好きだったのは、大学四年のーー六花とようやく打ち解けたあの日までだ。ということはもう七年弱も、六花は俺の気持ちを勘違いしていたということになる。
やっとの思いで気持ちを伝えられたのに、こんなことになるなんて想定外だった。
でも全て俺自身に非があるのは明確だ。六花にきちんと気持ちを伝えず、彼女を手に入れるために契約結婚なんて言葉を使ってしまった。たとえ俺を好きじゃなくても、一緒にいればいずれは愛が芽生えるんじゃないかーーそんな軽い気持ちでいた。
その軽はずみな行為が六花を傷つけてるなんて知らずにいたんだ。だからこんな遠回りをする羽目になってしまった。
六花に布団をかけながら、先ほどのことを思い返していた宗吾はあることに気付く。
『ちゃんとわかって宗吾に抱かれたし、契約結婚の意図だって理解してるから安心して……』
わかっているのに拒む理由って一体何だーーそこでようやく宗吾はハッとする。一つだけ心当たりがあった。気負わず俺のそばにいてくれる言葉を選んだつもりだったのに、逆に彼女を遠ざけることになってしまったのか……本当に俺はどうしようもない馬鹿だ。
だがもしこの仮定が合っているならば、六花は俺を愛してると確信していいのだろうか。だがいつから彼女の気持ちは俺に向いていたんだ? それについては考えてもわからなかった。
でも俺が朝夏さんのことを否定したとして、六花はちゃんと聞き入れてくれるだろうかーーいや、しないだろうな。
ただ今やるべきことだけはわかる。六花の誤解を解かなければーー。そして恥ずかしがらずに気持ちをもっとちゃんと伝えるんだ。でも仕事以外で女性と話したことがない俺が、六花の気持ちを変えることが出来るとは到底思えない。
その時、宗吾の頭にある人物が思い浮かぶ。今まで六花だけを想い続けてきたことを間近で見て、秘密にしてきた事実を唯一知るあの人の話を聞けば、もしかしたら俺を信じる気になってくれるかもしれない。
でもこれは最終手段だ。こんなことをしたら逆に六花に嫌われ、拒絶されるかもしれない。もしそうだとしても、何もしないより何かをやって断られた方がまだマシだと思えるようになったのは、今の自分が崖っぷちに立っているのがわかっているから。
宗吾は立ち上がると、スマホの画面を開き、電話をかけ始めた。
彼女が寝たのを確認してから、宗吾はベッドから降りてガウンを羽織る。それから脱ぎ散らかした服を拾いソファに置き、上着のポケットからスマホを取り出すと、六花が眠るベッドの縁に腰掛ける。
どうして六花が朝夏さんのことを知っているのだろうかーー宗吾は今までのことを思い出そうと、頭をフル回転させる。だがいくら考えてみても、彼女のことを誰かに漏らしたことはなかった。
しかも六花の言い方では、俺が未だに朝夏さんのことを引きずっていて、彼女と結婚出来ない代わりに六花と結婚するのだと思い込んでいるようだ。
なんでそうなるんだよ……ただそう考えると、今までの六花の行動は納得できる。あれほど頑なに結婚を拒み続けるのは、俺の気持ちが朝夏さんにあると思っているからだろう。
朝夏さんのことを好きだったのは、大学四年のーー六花とようやく打ち解けたあの日までだ。ということはもう七年弱も、六花は俺の気持ちを勘違いしていたということになる。
やっとの思いで気持ちを伝えられたのに、こんなことになるなんて想定外だった。
でも全て俺自身に非があるのは明確だ。六花にきちんと気持ちを伝えず、彼女を手に入れるために契約結婚なんて言葉を使ってしまった。たとえ俺を好きじゃなくても、一緒にいればいずれは愛が芽生えるんじゃないかーーそんな軽い気持ちでいた。
その軽はずみな行為が六花を傷つけてるなんて知らずにいたんだ。だからこんな遠回りをする羽目になってしまった。
六花に布団をかけながら、先ほどのことを思い返していた宗吾はあることに気付く。
『ちゃんとわかって宗吾に抱かれたし、契約結婚の意図だって理解してるから安心して……』
わかっているのに拒む理由って一体何だーーそこでようやく宗吾はハッとする。一つだけ心当たりがあった。気負わず俺のそばにいてくれる言葉を選んだつもりだったのに、逆に彼女を遠ざけることになってしまったのか……本当に俺はどうしようもない馬鹿だ。
だがもしこの仮定が合っているならば、六花は俺を愛してると確信していいのだろうか。だがいつから彼女の気持ちは俺に向いていたんだ? それについては考えてもわからなかった。
でも俺が朝夏さんのことを否定したとして、六花はちゃんと聞き入れてくれるだろうかーーいや、しないだろうな。
ただ今やるべきことだけはわかる。六花の誤解を解かなければーー。そして恥ずかしがらずに気持ちをもっとちゃんと伝えるんだ。でも仕事以外で女性と話したことがない俺が、六花の気持ちを変えることが出来るとは到底思えない。
その時、宗吾の頭にある人物が思い浮かぶ。今まで六花だけを想い続けてきたことを間近で見て、秘密にしてきた事実を唯一知るあの人の話を聞けば、もしかしたら俺を信じる気になってくれるかもしれない。
でもこれは最終手段だ。こんなことをしたら逆に六花に嫌われ、拒絶されるかもしれない。もしそうだとしても、何もしないより何かをやって断られた方がまだマシだと思えるようになったのは、今の自分が崖っぷちに立っているのがわかっているから。
宗吾は立ち上がると、スマホの画面を開き、電話をかけ始めた。