Lost at sea〜不器用御曹司の密かな蜜愛〜
「な、や、やめてよ……恥ずかし過ぎる……。というか、いきなりなんなの⁈ 宗吾って嘘でもそんなこと言うタイプじゃないよね⁈」
ベッドに潜り込んできた宗吾は、六花の背中に唇を這わせていく。濡れた髪から滴る水が背筋を滑り、それがくすぐったくて六花の体が小さく震えた。
「嘘を言うわけないだろ。今までの自分を反省してさ、ちゃんと俺の気持ちを伝えておこうと思って。そうすれば結婚だって前向きに考えられるだろ? 前も言ったけど、俺は六花しか考えられないから」
「……だから、そういう悪い冗談はやめてよ。心臓に悪過ぎる」
「冗談じゃなくて本気だよ」
宗吾はどこか不服そうに、六花を自分の方に向かせると、彼女の前髪を払い、額にそっとキスをする。
「なぁ六花、昨日の夜に話したことって覚えてるか?」
「昨日? 何のこと?」
宗吾の表情が曇ったのを見て、六花は慌てて昨夜のことを振り返り始めた。
ホテルに着いて、母親に電話をして泣いて、部屋に戻ってからはーーそこまで考えて、思わず赤面する。だとしても、宗吾がそんな顔をする出来事には思い当たらなかった。
眉間に皺を寄せて首を傾げた六花に、何かを考えるかのように目を細めた。それから意を決したように六花を真っ直ぐ見つめ、口を開いた。
「六花は誤解してるんだ」
「いきなり何? 誤解?」
「俺が愛してるのは六花だけだ。初めて体を重ねた日から俺は六花しか見ていないし、あの日以降誰とも付き合ってもない」
驚いたように目を見開いた六花の頬に、宗吾の指が優しく触れた。しかし彼女は戸惑いの表情を浮かべ、その手から逃げるように顔を背ける。
「確かにあの日、俺は失恋した。でも元々叶わない願いだったから、いつか諦める日が来ることはわかっていたんだ。それでも辛くて、一人でいたいのに、一人になれば苦しくなって学校に行った。そうしたら六花が現れた」
「タイミングが悪かったよね……」
「むしろ良かったんだ。六花は一人にしないでくれた……お前にだけはずっと本性を晒してたお陰かな。やっとあの時に呼吸が出来た気がした」
あの時は宗吾が思っていたよりいい奴で、元気づけようとしたのがあんな行動になってしまった。
宗吾に髪を撫でられ、その心地良さにふと目を閉じた時だった。
「六花が朝夏さんのことを知ったのはいつ?」
まさかそのことを聞かれるとは思わず、六花の心臓は大きく跳ね上がった。
きっと昨日私が口走ったからだ。あんなこと言うつもりはなかったのに、宗吾が愛してるなんて言うからーー。自分を言い聞かせるためにアサカさんの名前を口にしてしまった。
別に隠しておくことはないし、事実を知った上での方が話しやすいこともあるだろう。
「……宗吾が失恋したあの日、私を抱きながらその人の名前を呼んでたじゃない。ずっと好きだったって何度も言いながら……覚えてない?」
すると宗吾は宙を見つめて苦笑する。
「確かに言ってたな」
「だから宗吾の好きな人がアサカさんだってわかったの」
軽く言ったつもりだった。だけど宗吾の好きな人という事実を認める言葉が、こんなにも破壊力のあるものだとは思わなかった。
まるで失恋したような気持ちになるなんて。
ベッドに潜り込んできた宗吾は、六花の背中に唇を這わせていく。濡れた髪から滴る水が背筋を滑り、それがくすぐったくて六花の体が小さく震えた。
「嘘を言うわけないだろ。今までの自分を反省してさ、ちゃんと俺の気持ちを伝えておこうと思って。そうすれば結婚だって前向きに考えられるだろ? 前も言ったけど、俺は六花しか考えられないから」
「……だから、そういう悪い冗談はやめてよ。心臓に悪過ぎる」
「冗談じゃなくて本気だよ」
宗吾はどこか不服そうに、六花を自分の方に向かせると、彼女の前髪を払い、額にそっとキスをする。
「なぁ六花、昨日の夜に話したことって覚えてるか?」
「昨日? 何のこと?」
宗吾の表情が曇ったのを見て、六花は慌てて昨夜のことを振り返り始めた。
ホテルに着いて、母親に電話をして泣いて、部屋に戻ってからはーーそこまで考えて、思わず赤面する。だとしても、宗吾がそんな顔をする出来事には思い当たらなかった。
眉間に皺を寄せて首を傾げた六花に、何かを考えるかのように目を細めた。それから意を決したように六花を真っ直ぐ見つめ、口を開いた。
「六花は誤解してるんだ」
「いきなり何? 誤解?」
「俺が愛してるのは六花だけだ。初めて体を重ねた日から俺は六花しか見ていないし、あの日以降誰とも付き合ってもない」
驚いたように目を見開いた六花の頬に、宗吾の指が優しく触れた。しかし彼女は戸惑いの表情を浮かべ、その手から逃げるように顔を背ける。
「確かにあの日、俺は失恋した。でも元々叶わない願いだったから、いつか諦める日が来ることはわかっていたんだ。それでも辛くて、一人でいたいのに、一人になれば苦しくなって学校に行った。そうしたら六花が現れた」
「タイミングが悪かったよね……」
「むしろ良かったんだ。六花は一人にしないでくれた……お前にだけはずっと本性を晒してたお陰かな。やっとあの時に呼吸が出来た気がした」
あの時は宗吾が思っていたよりいい奴で、元気づけようとしたのがあんな行動になってしまった。
宗吾に髪を撫でられ、その心地良さにふと目を閉じた時だった。
「六花が朝夏さんのことを知ったのはいつ?」
まさかそのことを聞かれるとは思わず、六花の心臓は大きく跳ね上がった。
きっと昨日私が口走ったからだ。あんなこと言うつもりはなかったのに、宗吾が愛してるなんて言うからーー。自分を言い聞かせるためにアサカさんの名前を口にしてしまった。
別に隠しておくことはないし、事実を知った上での方が話しやすいこともあるだろう。
「……宗吾が失恋したあの日、私を抱きながらその人の名前を呼んでたじゃない。ずっと好きだったって何度も言いながら……覚えてない?」
すると宗吾は宙を見つめて苦笑する。
「確かに言ってたな」
「だから宗吾の好きな人がアサカさんだってわかったの」
軽く言ったつもりだった。だけど宗吾の好きな人という事実を認める言葉が、こんなにも破壊力のあるものだとは思わなかった。
まるで失恋したような気持ちになるなんて。