Lost at sea〜不器用御曹司の密かな蜜愛〜
今自分はどんな顔をしているんだろうーー宗吾には見られたくなくて、彼の胸に顔を埋める。胸が締め付けられ、涙が出そうになるのを堪えた。
「だからそれが誤解なんだ。俺は確かに朝夏さんが好きだった。でもそれは過去の話でクリスマスの日に再会した時にはもうーー」
「じゃあどうして再会したあの日、契約結婚なんて言ったの? お見合いが上手くいかないのはアサカさんのことがまだ好きだからじゃないの? 私と結婚しようとしたのだって……」
少しずつ声が荒くなるのがわかったが、抑えることが出来なくなる。
「違う。俺は六花が好きだった。だから六花のそばにいたくて、契約結婚なんて嘘をついたんだ」
「なんで嘘をつく必要があるの? 普通にそう言えばいいじゃない!」
「恋人と別れたばかりで、卒業以来久しぶりに会った男にいきなりプロポーズされたって、普通は受けないだろ?」
「じゃあプロポーズじゃなくて、普通に告白してくれれば良かったじゃない。そもそもどうして結婚なの? そんなに急ぐ必要があったの?」
「六花が欲しかったんだ」
「……何それ。私は物じゃないし」
「わかってる。六花に何も言わずに卒業したことをずっと後悔してたんだ……。次に会えたら今度こそ六花を自分のものにしたかった」
どうして今更そんなことを言うの? だったらあの時の私の選択は何だったの? 宗吾がはっきり言ってくれていたら、もっと違う選択肢があったと思うと、苛立ちが募っていく。
「それが契約結婚なの? そんなのって本当の愛とは思えない。一方通行の愛よ」
宗吾が好きと言ってくれたら、私だって素直に好きと言えたかもしれない。偽物の愛だと思ったから、本当のことが言えなかったーー。娘のことだって打ち明けられたかもしれないのに……。
たまらなくなって顔を上げて宗吾を睨みつけたが、宗吾はただ六花を真っ直ぐ見つめていた。
「でも俺なりの愛情表現だったんだ。結婚すればそばにいられる、いつかは俺を見てくれる……確かに六花の言う通り、一方通行の愛かもしれない。それでも六花が好きなんだ。信じて欲しい」
「……信じない」
宗吾の長い指が六花の涙を拭う。
「じゃあどうしてそんなに泣いてるんだよ……」
「……そんなのわかんない……」
すると宗吾は起き上がり、悲しげな表情で六花の髪を撫でた。彼女に背を向けると、ベッドの端に座り足を下ろした。
「じゃあ聞くけど、六花はどうしてあの日、俺の前からいなくなったんだ?」
「だから……無理だって思ったから……」
「無理って思ったのに、今は俺を受け入れてくれている。何か他に理由があったとしか思えないんだよ」
「それは……」
問い詰められ、何を言えばいいのかわからなくなる。疑似恋愛中なのに妊娠をして、あなたに拒絶されるのが怖くて逃げたとはっきり打ち明ける?
ここで話してしまえば、最後の日を待たずにこの関係が終わりを迎えるかもしれない。
それでいいじゃないーーそう思うのに、寂しく感じるのは何故だろう。
「だからそれが誤解なんだ。俺は確かに朝夏さんが好きだった。でもそれは過去の話でクリスマスの日に再会した時にはもうーー」
「じゃあどうして再会したあの日、契約結婚なんて言ったの? お見合いが上手くいかないのはアサカさんのことがまだ好きだからじゃないの? 私と結婚しようとしたのだって……」
少しずつ声が荒くなるのがわかったが、抑えることが出来なくなる。
「違う。俺は六花が好きだった。だから六花のそばにいたくて、契約結婚なんて嘘をついたんだ」
「なんで嘘をつく必要があるの? 普通にそう言えばいいじゃない!」
「恋人と別れたばかりで、卒業以来久しぶりに会った男にいきなりプロポーズされたって、普通は受けないだろ?」
「じゃあプロポーズじゃなくて、普通に告白してくれれば良かったじゃない。そもそもどうして結婚なの? そんなに急ぐ必要があったの?」
「六花が欲しかったんだ」
「……何それ。私は物じゃないし」
「わかってる。六花に何も言わずに卒業したことをずっと後悔してたんだ……。次に会えたら今度こそ六花を自分のものにしたかった」
どうして今更そんなことを言うの? だったらあの時の私の選択は何だったの? 宗吾がはっきり言ってくれていたら、もっと違う選択肢があったと思うと、苛立ちが募っていく。
「それが契約結婚なの? そんなのって本当の愛とは思えない。一方通行の愛よ」
宗吾が好きと言ってくれたら、私だって素直に好きと言えたかもしれない。偽物の愛だと思ったから、本当のことが言えなかったーー。娘のことだって打ち明けられたかもしれないのに……。
たまらなくなって顔を上げて宗吾を睨みつけたが、宗吾はただ六花を真っ直ぐ見つめていた。
「でも俺なりの愛情表現だったんだ。結婚すればそばにいられる、いつかは俺を見てくれる……確かに六花の言う通り、一方通行の愛かもしれない。それでも六花が好きなんだ。信じて欲しい」
「……信じない」
宗吾の長い指が六花の涙を拭う。
「じゃあどうしてそんなに泣いてるんだよ……」
「……そんなのわかんない……」
すると宗吾は起き上がり、悲しげな表情で六花の髪を撫でた。彼女に背を向けると、ベッドの端に座り足を下ろした。
「じゃあ聞くけど、六花はどうしてあの日、俺の前からいなくなったんだ?」
「だから……無理だって思ったから……」
「無理って思ったのに、今は俺を受け入れてくれている。何か他に理由があったとしか思えないんだよ」
「それは……」
問い詰められ、何を言えばいいのかわからなくなる。疑似恋愛中なのに妊娠をして、あなたに拒絶されるのが怖くて逃げたとはっきり打ち明ける?
ここで話してしまえば、最後の日を待たずにこの関係が終わりを迎えるかもしれない。
それでいいじゃないーーそう思うのに、寂しく感じるのは何故だろう。